【レポート】2/16 2016年度報告会、2017年度総会

2017.3.6

2月16日横浜のBankART にて、2016年度活動報告会と2017年度総会が開催されました。

まず理事長の橋本さんから開会の挨拶後、委員会室室長の齋藤啓さんより2013年の立ち上げ当初から現在に至るまでの組織構成の変化や、2016年度に開催したテーマ委員会や企画委員会などの事業説明がありました。委員会終了後のレポートの公開が遅れることが多く会員へのフォローが充分でなかったことを反省しつつ、各委員会で中身の濃い議論をすることができたとコメント。また、東京以外での開催の機会が減ってはいるが、初開催できた地域があったことはよかった。さらに今後、会員が自主的に会員提案企画を立ち上げ実施できる体制を整えていきたいと話しました。

12月に三重・名古屋で企画委員会を主催してくださったうりんこ劇場の平松さんからも一言。地域の劇場や若手制作者を紹介する機会となり、また、理事であり震災経験者の鈴木さんをスピーカーに招いたことで有事の際の状況を想像し共有することができたとおっしゃっていました。さらに、政策提言調査室室長の奥野さんを中心に勉強会を行い、地元の若手制作者とともに何をやりがいに、なぜ舞台芸術に関わろうとしているのかといった話など意見交換の場となったとのことでした。

続いて、各委員会について理事数名からコメントがありました。第2回企画委員会は監事の若林さんをスピーカーとしてお招きし、自分たちが普段感じている、疑問と思っている部分を問い直せる機会であった。1年を通じて気づきや再考する機会に恵まれたという意見が多く聞かれました。

報告2では、以下2つのシンポジウムについて担当理事より報告がありました。
①3月20日「なぜ国際共同製作か?「国際化」する舞台芸術の意義と課題」
登壇者:クリストフ・スラフマイルダー(クンステンフェスティバルデザール(ベルギー)芸術総監督)、シャンカル・ヴェンカテーシュワラン(ケーララ州国際演劇祭(インド)芸術監督)、マーク・ヨーマン(オランダ、フローニンゲン/ノールデルゾン舞台芸術フェスティバル アーティスティック ディレクター)
横山:話を聞く中でヴェンカテーシュワラン氏は国際共同製作に対する考え方が他と異なっていることが分かった。ヨーロッパの作品を紹介する方が客は入るがそういう現状を変えたい。舞台芸術に資金をかけられる国が優遇される状況を変えたいといった話が印象的であった。

②11月13日「施行から4年、劇場法をもっと「活用」するために」
第1部 基調講演「劇場法制定に至る背景とその意図」
スピーカー:米屋尚子(公益社団法人 日本芸能実演家団体協議会)
第2部「施行後の現状と、今後の活用について」
ゲスト:宮崎刀史紀(ロームシアター京都)、松浦 茂之(三重県文化会館)
奥野:劇場法が停滞していないか、施行後変化がないのではないかという思いからこのテーマでシンポジウムを設けた。劇場法に直接関わりのない制作者も多いが、政策提言をどう活用できるかを考えるきっかけにして欲しい。第2部では実際に劇場に勤務する制作者を招き意見を伺った。劇場法(特に第3条)の「劇場とは◯◯をする場所である」というのを規準として、自分の劇場を評価しやすくなったことはメリットであり、また、規準ができたので行政の方とベースを共有し話がしやすくなったという話があった。

報告3では、本年より立ち上げた会員以外の方も参加可能な政策提言調査室の勉強会について、室長の奥野さんと理事の横山さんより報告がありました。
各回の内容は以下のとおり
1回目:会員のデータ(性別、年齢、職種など)を見て話を進める中で制作者の資格化、専門性についての話が挙がった。
2回目:参加者各々が今までの議事録を読み込み、政策提言や舞台芸術の価値といったキーワードを抜き出し、今我々が何を目指すべきかを議論した。
3回目:舞台芸術の公共性について話し合った。議事録掲載後も反響が大きかったので、公共性について言葉にしてみることの重要性を感じた。
4回目:参加者は名古屋の若手制作者が中心であったため、何に実感を持って舞台芸術に関わっているのかということを話し合う機会とした。
5回目:ON-PAMのステイトメントを書く。政策提言にはリアクション型(問題解決のために動く)とビジョン型(こういう団体になりたいというビジョンを語ること)の2つがあるが、ON-PAMのステイトメントはビジョン型で書く。

また、先に会員向けMLでも流れたお二人のステイトメント案をもとに、それぞれ説明がありました。
横山:ON-PAMさらに舞台芸術に触れたことのない方にも伝わるステイトメントを書いてみたが、奥野さんとの違いは政治的な合意形成は一定の必要性があると思う点だ。ON-PAM以外で政策提言を出せる団体がないのでぜひやりたい。
奥野:ON-PAMのステイトメントは時代によって更新されるべきというのが前提であり、会員に向けた内容になっている。結果を出さなくてもいいものとしたい。社会の中で失われているように感じる「風通しのよい空間」にしたい。多様性が失われるので政治的な合意形成を目的としない方がよいのではないか。
会員の皆さんからも意見をいただきたいので数日以内にアンケートをとりたいと締めくくりました。

最後に、日本で開催されたAPP(アジア・プロデューサーズ・プラットフォーム)キャンプの報告がありました。アジアの舞台芸術制作者のネットワークとして2014年に立ち上げ、毎年主催国(2014韓国、2015台湾、2016日本、2017オーストラリア)を変えて開催してきました。今年度は東京を中心に開催し、1週間でアジア約10カ国から来日した制作者と対等な関係で話し合えたことが魅力であり、開催後も参加者同士がFBなどで情報共有を続けているとのことでした。

そのほか事務局からは、会員同士が出会い自主的な企画を提案・実施する会員提案企画をうまくフォローしていきたいという話がでました。(過去例:東京で委員会を開催した際に京都と沖縄でもサテライトミーティングを行った。)
さらに理事長からは、来期に取り組みたい課題として以下のことが挙げられました。
1. 政策提言を出すのか否か、もし出す場合はどの部分を提言とするか。また、ON-PAM全体としてか、有志として出すのか。
2. スムーズに運営を行うための予算配分。

午後の総会は、28年度は政策提言調査室勉強会の立ち上げや、APPキャンプの主催国を務めるなど課題や気づきの多い1年だったので、29年度へ向けて会員のみなさんの意見を取り入れつつ体制を整えていきたいという理事長の挨拶で開会しました。

参加した会員からは以下の意見が挙がりました。
・委員会のスケジュールをなるべく早く告知してほしい。
・委員会は議論の時間を考慮し合宿形式にするなど長めの時間設定にしてほしい。
・3期目として前進するために団体として今いる場所を話し合う場が必要。
・ワールドカフェ的な手法を我々のネットワークに取り入れてもいいのではないか。
・アメリカのNPN/VAN(アメリカ国内の70の組織が参加するクローズド・ネットワーク)の参加団体は基本的な価値観を共有しているという前提があるので、何かあれば、団体の代表は即座にネットワークとしての声明を出すことができる。

このような会員からの意見を受け、理事長は、会員間で共有する価値観や基盤となる提言を設けそれに反することが起こった際は、ON-PAMとして即座にアクションを起こすことができる体制を整えておくのがいいのではないかと提案しました。また、委員会を細分化せずに合宿などで集中して議論できる場が必要であると話すなど、今後の理事会で詳細を詰めつなげていく意向を示し、29年度に向けてスタートを切りました。