【レポート】APPキャンプ in 香港・マカオ・広州 レポート [3日目]

2019.12.20

2019年11月19日

今日からグループリサーチ。

5つのグループが香港残留組(1, 2)、マカオ組(3, 4)、広州組(5)に別れる。

各グループのリサーチトピックは1. 香港における他分野横断的な芸術表現、2. 香港の芸術と社会、3. マカオ・珠海における国や都市の境界をまたぐフェスティバル、4. マカオにおける公共体と芸術、5. 広州におけるインディペンデントな演劇人とヴィジュアルアートスペースのコラボレーション。

ただし香港組は安全への配慮でスケジュールを一部変更し、1と2が同一行動をすることに。私は香港組に。この日はいくつかのインディペンデントなスペースを視察した。

香港島の中心的商業地区の灣仔(ワンツァイ)にあるACO(Art & Culture Outreach)は2003年創立。個人の篤志家が14階建てのビルの18の部屋を低価格でアーティストに貸し出している。最高3年間のスタートアップ支援。世界でも有数の高家賃地帯で、ふつうに借りると一部屋2,500米ドルくらいかかるという。サウンド・アーティストSteve Hui、ヴィジュアル・アーティストNicole Punに出会う。最上階には運営母体ACOと書店が入っている。運営費は家賃収入などからで、独立採算制。書店にはアーティストたちと独自に出版した本や香港の作家の著書、政治的な著書など、他では見かけない本が並ぶ。オフィシャルな場とはだいぶちがう雰囲気。

写真左:ACO外観 右:ACO入居団体

写真上:ACOにて、左からLeung, Orlean Lai, Steve Hui 写真下:ACO内書店

次に訪れた香港藝術中心(Hongkong Arts Centre)も建築家が個人で建てたもの。芸術学校「香港藝術學院」や飲食店などが入っていて、家賃収入や寄付などにより独立採算制で運営しているアーツセンター。今回香港グループを担当してくれたAPPメンバーのイアンはここで働いている。70席ほどの小劇場と、香港では貴重な460席ほどの中劇場がある。

写真左:香港藝術中心入口 右:香港藝術中心小劇場入口

写真左:香港藝術中心吹き抜け 右:香港藝術中心1F

写真:香港藝術劇場内

大館は2018年にオープンしたばかりのアートハブ。旧中央警察署・中央裁判所・ビクトリア監獄が再利用されている。かなり広大なスペースで、現代美術館や舞台作品を上演できる小ホールがあり、屋外のさまざまなスペースで舞台作品の上演やコンサート、映画の上映が行われている。競馬競技団体で香港最大の慈善団体でもある香港ジョッキークラブが主な資金を提供し、レストランの家賃収入などで運営資金を賄っている。牢獄のなかでお酒が飲めるおしゃれなバー「Behind Bars」も人気。

写真:大館ホール外観

写真左:大館内部 右:大館内美術館

写真左:大館内美術館内部 右:大館検閲廣場

写真:大館バー

写真:大館壁画

九龍地区にある牛棚藝術村(Cattle Depot Artist Village)はかつて牛の検疫・屠殺場が芸術村になっている。ビデオアートのVideotageや劇団「前進進戲劇工作坊(On & On Theatre Workshop)」の劇場「牛棚劇場(Cattle Depot Theatre)」もある。重要な小劇場の一つ。

写真上:牛棚劇場内部 写真中左:Videotage  写真中右:Videotageアーカイブ 写真下:牛棚劇場外観

ふたたび西九龍文化区の「自由空間」に戻り、CCDCによる城市當代舞蹈節(City Contempory Dance Festival)の演目『喬楊、もうすぐ55歳(《Almost 55 喬楊》)』を観劇。CCDCに在籍する最年長のダンサー喬楊による初のソロ作品。振付は台湾の周書毅(CHOU Shu-yi)。喬楊は山東省の小さな町に生まれ、地元の歌舞団で伝統舞踊をやっていて、23歳のときに広東でアメリカ人の振付家からモダンダンスを学んだという。中国のコンテンポラリーダンスの歴史を体感できる作品。

執筆:横山義志