【レポート】2014年度の文化政策委員会「キックオフ・ミーティング」が開催されました。

2014.4.22

 2014年4月16日、東京の亀戸にあるネビュラエクストラサポート(Next)のミーティングルームにて、文化政策委員会の「キックオフ・ミーティング」が開催されました。この日の参加者は25名です。
 
まず80日間の英国留学から帰国したばかりの文化政策委員会の委員長、伊藤達哉さんより今年度の方針についてお話がありました。文化政策委員会はその名のとおり文化政策について研究し、具体的な政策提言を行っていくことも目的の1つとしています。ただ、ON-PAMとして提言を1つにまとめあげるのではなく、会員の多様性を重視した組織であるON-PAMならではの方法を探るのもいいのではないかと述べられました。
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次に昨年度に実施された3回の文化政策ラボについて、各担当者より簡潔な報告がありました。第1回は演出家の鈴木忠志さんをゲストに招いたディスカッション(担当:伊藤)、第2回は助成金を出す側の担当者が一堂に会し、制作者の質問に答える討論会(担当:中村茜)、第3回は座・高円寺の芸術監督である佐藤信さんの基調講演と、フェスティバル/トーキョー元実行委員長の市村作知雄さん、ウィーン芸術週間の前ディレクターのシュテファニー・カープさんと前ドラマターグのマティアス・ピースさん、そして佐藤さんを交えたパネル・ディスカッション(担当:丸岡ひろみ)でした。
 
今年度もまた3回実施される文化政策ラボの開催方法について、今回の進行をつとめる武田知也さんから説明がありました。昨年度はすべて3時間ほどだったため、ゲストの話を聴いただけでその後の議論が深まらなかったことや、開催地が東京だけだったことなどが問題点として挙げられました。
その後の質疑応答では、会員から「3回のうち1回は1泊2日の合宿形式で行い、あとの2回は1日間(朝から夜まで)にしてはどうか?」、「合宿形式の会場は首都圏以外がいい」などの意見が出ました。
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伊藤:
設立の際、提言を行っていくことを掲げたが、ON-PAMでどういう提言が可能なのか
通常は加盟団体の利益のためにメッセージを出していく。ON-PAMは多様性のある団体。
基本的人権、表現の自由、差別などの問題以外は活発な議論や多様性を提示していくというのが
スタンスなのではないか?そういう話し合いが今、運営委員の中で行われている。
 
武田:
・運営面
レクチャー+ディスカッション+成果発表まとめ
3部構成で、1日ないしは数日にかけて議論を深めることを試みたい。
 
・運営体制
担当理事で2013年度は企画。
2014年度は各委員会企画ごとで運営チーム編成。立候補を中心に。4~7名ぐらいのグループで。
 
・委員会開催予定と担当者
ラボvol.1 6月予定 担当:中村茜
ラボvol.2 9月予定 担当:相馬千秋
ラボvol.3 12月12~14日で検討中 担当:伊藤達哉
 
 
次回の文化政策ラボは6月に開催予定で、去る3月に文化庁が発表した「文化芸術立国中期プラン」をテーマの候補として検討していることなどが、担当の中村さんから発表されました(注:他にも候補のテーマがあり、詳細は決まり次第、告知するとのこと)。
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参考:『文化芸術立国中期プラン~2020年に日本が,「世界の文化芸術の交流のハブ」となる~』
 
また、12月の文化政策ラボの担当者である伊藤さんは「ラボの実行メンバーになることに、自分はメリットしか感じていません」と語り、文化政策委員会の活動への積極的参加を会員に勧めました。
 
今回のキックオフ・ミーディングでは1人ずつの自己紹介は行わず、新しい試みとして“ワールド・カフェ”形式によるディスカッションを行いました。
参考:ワールド・カフェとは?
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 1つのテーブルに着席している約5人で、与えられたテーマについて10~15分ほど話をします。リラックスして、自由に、相手を尊重してお互いの話を遮らないことなどがルールです。各テーブルの代表者1名が話し合った内容を簡単に報告してから、座席を移動して新しいグループを作り、また次のテーマについて話し合いを始めます。テーマは「なぜ制作をやっているのか」「制作にとって大切なこと/制作として大事にしてることは?」「文化政策委員会に期待すること」「文化政策委員会で取り組むべきこと/話し合うべきこと」でした。テーブルの上には大きな模造紙が貼り付けられてあり、誰もがメモをすることができます。白い紙が文字で黒く埋まっていくのを見ることで、議論が積み上げられたことを視覚的に確認できました。
 
 進行の武田さんのスムーズな誘導により、とてもで実りの多いディスカッションになったと思います。「少人数で話せて良かった」という声もありました。個人的には「物事には二面性があり、ピンチからチャンスを見つけられる」「制作者に必要なのは鈍感力」という話が印象に残っています。ON-PAM会員それぞれが持つ知識や知恵の一部を、大人数で一気に共有できたように感じました。終了後の懇親会でも初めて会った方々と有意義な交流ができました。
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【ワールド・カフェ形式によるディスカッション発表まとめ】
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Q:なぜ制作者になったか?
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グループ1
制作をしている人が、このテーブルにはひとりしかいなかった。
彼はもともと全然違う仕事をしていて流れで制作になった。
継続している理由、好きなアーティストと仕事ができる。
 
グループ2
鳥の目と虫の目。俯瞰の目と集中した目。
 
グループ3
自分が人前に出るのではないから。芝居が好きが原動力。お金をつくる仕事。
 
グループ4
制作の方が踊るよりも楽しい。それを支える、頑張る人を支援するのが面白い。
演劇が面白いことを広めたい。
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Q:制作者にとって大事なことは?あなたが大切にしていることは?
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グループ1
物事にはポジティブとネガティブのふたつがある。両面あるがその中でポジティブを選ぶ。
 
グループ2
いいところを大事にする。カンパニーやアーティスト。道を示していくこと。発展させていくこと。
責任を持って仕事をする。モラル・公平さ。作品やアーティストをみたときにどう支援していくか。
まいったと言わない。
 
グループ3
現場関係で大事なこと。スタッフとキャストを繋げていく。信頼してもらうために言葉を口にしていく。
いろいろな意見のバランス感覚。
 
グループ4
スキルだけではなく思いだけではなくバランスをとって深める。
七つの話を同時に聞けるようになりたい。いろいろな人と関わっていくので。
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Q:文化政策委員会で個人的にやりたいこと
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グループ1
文化政策委員が3人のテーブルだった。
文化政策とはなんぞや?で議論。
自分がやっている仕事といかに結び付けるか。
 
グループ2
文化庁が中期プランをつくるときにON-PAMに相談して欲しかった。
誰がプランをどう作っているのか?
労働環境を改善したい。
横浜で公演できる民間の劇場外の場所を探しているが、ON-PAMにいる人に実現方法を聞きたい。
 
グループ3
ネガティブな現状をどうポジティブにしていくか。
 
グループ4
レベルの高いディベートをして議論をしたい。
夢を持ってディベートをして乗り込んでいきたい。
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Q:文化政策委員会で話し合うべきこと
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グループ1
なぜアートが必要なのか。まずそこから話さないと足元をすくわれる。
制作者は今ある制度上でやれることを考えがちだが
人間が本能的に、文化、遊び、表現をやりたがるということを
体験に裏打ちされて制作者は語れるようになりたい。
制作者の労働環境を整えること、アーティストの価値を伝える。
中期プランの話になり・・・国が立つ前にひとりひとりが立つ必要がある。
 
グループ2
ぱっと出なかった。文化政策そのものを考える。
文化政策と自分の仕事がどうつながるのかを考えたい。
首長や政権がかわるたびに変わる文化政策を
どう継続した政策と考えていくか。
 
グループ3
中期プランについて。制度をつくる側と使う側の人が話し合う。
ON-PAMでしかできないこと。
助成金で落ちた理由がわからない。制作者の労働環境。
消費税があがったことによる対応を話し合う。
立場によって労働環境違う。嘱託の職員は5年で雇い止め。指定管理の問題。
共通してくるもの・・・出てくるので話し合うことが大事。
 
グループ4
夢を魅力的に自分の言葉でディベートできるようになりたい。
去年行けなかった先に今年はいけるように。レクチャー後のディスカッション。
音楽業界の人との関係でそこから視点を変えられる、広げていけるといい。
人に会う。話し合う。本を読む。
ON-PAMの夢はひとつでなく多様性があるのがいい。
ひとりひとりが語れる土台。
文化政策を考える上で経済、政治を知る必要がある。
何をもって国力を高める。日本の場合は経済と切り離せない。イギリスも。
経済との関わり、文脈での文化政策。
少人数で話をすることはいい。
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 以上です。
(高野しのぶ/川口聡)
 
 
■2013年のON-PAM文化政策委員会レポート
「しのぶの演劇レビュー」
文化政策ラボvol.1「文化政策の理念とは?」
文化政策ラボvol.2「理想と現実のはざま~日本版アーツカウンシルの動向から考える文化行政の未来~」
文化政策ラボvol.3「公共・劇場について考える-劇場法制定を受けて」
 
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