キックオフ・ミーティング議事録

2013.8.5

蔭山陽太さん(神奈川 KAAT 神奈川芸術劇場 支配人):神奈川県の公共劇場で支配人をしております。今の人材育成の話を聞いていて、私は振り返ってみると、民間の劇場から劇団の制作をやって、今は公共の劇場の制作をやっているんですけれども、全然意図したわけではなくて、はっきり言って偶然です。東京中心で物事を考えて一極集中しているわけですけれども、そこで制作者の就職とかを考えていくと、ほぼ、運。なぜかというと、多くの公共劇場がそうなんですけれども、新人の募集をしていない。経験者の募集をするわけですね。大学でアートマネジメントを学んでそのまま就職するという道が、今非常に閉ざされている。KAATはインターンを受け入れています(笑)

私は会の説明があった第3条、あれこそが実現ができるかどうかにかかっているな、と思いました。全国の公共ホールは全部で2,000以上あると思います。2,000のホールが活性化して、いわゆるアートマネージャーを求めるという状況になれば、それだけで2,000人以上の求人があるわけです。そういうことを、社会全体が変わっていかないと、そういうところに行かないんです。せっかくアートマジメントの勉強をしても、次につながっていかないんですね。むしろ今劇場なんかで我々が求めているのは、ほかの企業とか、ほかの仕事をやってきた人をあえて求めていたりすることも多いんですね。つまり社会的な、社会とつながっている人が欲しい、ということもあるんですね。そういった視点で考えていかなければいけないなと思います。

それとさっきの新劇製作者協会。私も昔、入っていたような入っていなかったような記憶があるのですけれども(笑)、あれは調べたら、1961年にできているんですね。アングラとかができる前、新劇という言葉が格好良かった時代のことなんですね。当時は新劇経営製作者協会という名前でした。目的はやはり、職能の利益を代表するような組織で、今回書かれているような、制作者が積極的に社会と関与していくというようなことは書いていないんですね。当時は新劇運動というものがありましたが、そこに依拠しているということがあります。

そういう意味では、今日開かれているこの会で言われている規約というのは、画期的だと思います。私は、新しい歴史の1ページがここで始まっているような気がして、聞いていて非常にわくわくしています。
なので人材育成という観点からいくと、今の仕組みの中ではなかなか次に進まない、それを本当に変えていくような、アートマネジメントを勉強していく中で、自身もそれを変えていく、つまり就職するだけではなく社会を変えていくという視点でアートマネジメントを学んでいって、絶対につながっていくということが必要なのではないかなと感じました。

三坂さん:人材育成の中で、もしこのオープン・ネットワークが実際に行われたときに、どのくらいのネットワークを自分がつなげられるかいうのは、参加される方のモチベーションであるとか、その仕方に関わっていると思うのですけれど、事務局の常務理事の人は、たぶんそのオープン・ネットワーク全体の動きも把握しているし、ものすごく関わる人ということで、この人が多分、このオープン・ネットワークの中で一番ネットワークに触れることができるし、何かしらか経験を積むことができるものだろうと思います。

正会員の会費だけで事業の費用を賄ったりとか、常勤として雇うようにするのは、最初は難しいと思うのですけれど、もしそれができるような状態になったときは、できれば若い、まだ経験のあまりない人、なさすぎても仕事に支障が出るとは思うので難しいのですが、より発展できるような極力若い世代の人を起用してほしいと思うし、2年とか4年とかの任期というのがあるので、それを経験したことがある人が色々な地域に点在していると、そこでネットワークがまた広がる、その人が結構大きめのハブになれるというのがあるので、そういう風になるといいなと、話を聞いていて思います。

齋藤さん:人材育成の視点から、いくつかネットワークの在り様がおぼろげながら見えてきたのではないかと思いますが、整理しますと、人材育成ということがあって、それとこのネットワークがどうあるべきかということの繋がりを見つけようとしますと、まずさっき野村さんが仰っていたように、各会員がアクティブになることによって、そこから交流が生まれて、ゆるやかなサブ・ネットワークというものが生まれるんじゃないかということが一つありました。

それとさっきヲザキさんが仰っていたことで、専門性を突き詰める部分ともうすこしゆるやかな部分が並行してあってもいいんじゃないか、ということがありました。その専門性を突き詰めるのが委員会というものになるのかもしれませんけれども。それに関連してさっき永川さんの方から、委員会自体がどれだけオープンなものになるのかというご質問がありました。もう一つ、いま三坂さんの方から、常務理事の役割というのがありました。組織の在り様という方に議論を移して、この委員会がどれだけオープンなものになるのか、常務理事の役割について話したいと思うのですが。

橋本さん:委員会として立ち上げることは、理事会で決めようとしています。それはなぜかというと、予算を使うから。それは、会員の皆さんから集めた会費を使っているので、説明しなくてはいけないから。そういうプロセスで決まるということではあるけれども、二つ意見が分かれました。その委員会の責任者が、理事であるべきかどうか。正会員であれば誰でも委員会を立ち上げることができるのか。今のところ発起人の間で話しているのは、正会員であって、予算をつける必要性がある議題であれば、誰が委員長になって委員会を立ち上げてもいいんじゃないか、ということを話しています。

丸岡さん:常務理事は専任して事務作業をすることになり、先ほど仰られたようにそこがハブになりますから、情報を正確に受け正確に処理するという能力を持ち役割を負っている人がつくことになる。ところで常務というか専任者の必要性について補足したいのですが、日本の中にいくつかネットワークがあってですね、例えば九州にネットワークが多分あったり。色々とあったけれど、続かない。それは事務局がないというのが一つの原因と言われています。
北海道演劇財団が創っているネットワークが継続している理由は、必ずしも一概には言えないと思いますが、それ自体を専任できる人がいる事は大きいのではないでしょうか。やっぱり専任をする人がいないネットワークというのははかない。

たとえば三年くらい前に、助成金なくなるかもしれない、だから、みんなでフォーラムやって反対しよう、と集まっても、最初のパブリック・コメントを出すのでへとへとなわけです。また、今ここで色々な意見が出ましたけれど、その中には問いが多かった。どうするんですかと。しかし質問をしても回答はないから、自分たちが当事者として回答を創って行くというか。

話がかわりますが、さっき伊藤さんが重要なことを言っていたように、例えば助成金に関するルールや条文は変えられるわけですよ。現状とかけ離れた助成金のルールでもそれは仕方のないルールとして、クロバティックにそれこそ隙間隙間で対応して20年たって身動きが取れない所も多い。こういう状態を変えていこう、現場から現状に則した体制をつくる為の提言=アドヴォカシーをすることで変えて行こうとすることが目的に入っているわけです。

田窪桜子さん(東京 産経エクスプレス):全く立場は違うのですが、10月から演劇担当となったので、いまの若い世代が何を考えているかを知りたいと思っての話です。実際は、制作者に力を入れてほしいと思っています。制作者というのは、演劇なり、芸術に関わる人。というのは芸術文化振興基金の話が出たのですが、私、審査員をやっています。声を出す人の力がないと変わらないんですが、ちゃんとあれば通るんですね。だから今回話があったように、規約があって、きちんと理事とか、名前は何でもいいと思うのですが、ただそれが国に通ずるものとして作ってほしいなという風に思います。

文化庁の中も愛がある人はいっぱいいます。だけど組織なんで動かないんですね。いつも演劇に関わる制作者を見ていると未熟だなと思うのは、世の中のルールっていうのは変えられるんですけれど、まずルールがあるので。社会を知らない人があまりにも多いんですね。申請書を見ても、本当にひどいものが多いです。これは個人的なことなんですが、どうぞ聞いてください、自分たちが出した申請書がどういうものか、聞かれたら答えるということは、審査会でも言っていますので。社会性を身につけるということをすごく制作者に求めているので、そこはとても期待しています。さっき蔭山さんが言っていたのですが、20年くらい前に、新劇の制作者なり、アーツマネジメントという言葉が出た時に始めた方々と勉強会みたいなことを始めたんですね。で、蔭山さんメンバーですよね。

蔭山さん:あ、はい。

田窪さん:私もその場にいたのですが、続かなかったのは、やはりこういう形の規約であるとか、オープンであるとか、ある程度のルールがあってからだと思うので、そこに今回とても期待しています。だから、強くなってほしいなと思います。あともう一つ人材育成なんですが、ノウハウその他を教えるのはいいんですが、自発的に演劇を勉強しようっていう制作者が少ないので、その方向性を持っていくということも、意識を育てるということも是非やって欲しいなと思っています。これはあくまで客観的観客として見ての意見なんですけれども。

ゴーチの伊藤さんはよく知っていると思うんですけれど、10年間、演劇を勉強する会を続けています、全く違う制作者があり、ジャンルが全く違うメンバーでやっていますけれども、それは戯曲を勉強する会なんですけれども、最初は、岸田國士戯曲賞が欲しいといった人間が岸田國士の戯曲を読んでいないと言ったんですよ。それが実際、客観的にみると演劇の現状なんですね。ここの発起人の方々はその中でもトップレベルの方だと思うので、そういうところを動かしてほしいなとか、それは意見というよりも客観的に見ていた感想なんですが。あと国との関わりの中に入っているとすごく見えるので、その辺を期待しております。

齋藤さん:時間があと10分ちょっとなんですが、もう二つ、話したいことがあるかなと思っています。一つは社会の状況を変える、もしくは政策を変えていくということですね、これが英語で言うアドヴォカシーということなんだと思うのですが、これが一つ、このネットワークの存在意義なんではないかなと思います。もう一つがですね、国際交流。海外とどうつながっていくか、ということもこのネットワークの大事な点としてあるんではないかと思います。

広田さん:意見というか質問ですが、ちょうど国際的なことについてお伺いしたいと思っていたのですけれど、例えば、アジアとの交流をすると。アジアとのどこかで2014年、会をするというのがあったかと思うんですけれど、アジアという言葉でイメージされているのはまずどこなのか、ということ。いま日中韓は様々な、既存のネットワークがあると思うんですね。BeSeTo演劇祭であるとか、あとは日韓演劇交流センターみたいなものがあると思うんですけれど、そういったものとどうつながっていくのかということをお伺いしたいですし、あとアジアというとき、どういうイメージを持たれているのかということ。

もう一つだけ質問したいことがあったのですが、例えば地域でやる、アジアでやるというのはすごく広い話だと思うんですけれども、例えば京都でやるっていったときに、東京以外でやるというのはすごくいいことだとも思うんですが、反面行きづらいということもあると思うんですね。情報共有を、例えば行けなかったときに、会員の人がどうやってしていくっていうことに関しては、どのようにお考えかという点を伺えればと思うんですが。

丸岡さん:アジアについては、国を限定したりする段階ではなく、まだ曖昧です。ヨーロッパでもないし、北米でもないし、まあ、だいたいこの地域というかんじで。ただ、地政学的なリアルポリティクスにまかれない相手と行なう事は大事だと思います。具体的にじゃあ誰とやるんだという時に、こういうミーティングを共催する可能性のあるプラットフォームやフェスティバルは今もうすでにあります。この考えを共有してくれる相手のなかで2014年までに特定して実施し出来ればと思いますが。今日ここにはコ・ジュヨンさんがお越しですが、すぐ頭に名前が浮かぶ相手が私は何人かいますし、他の人もいるとおもいます。

横堀ふみさん(兵庫 Dance Box プログラムディレクター):DANCE BOXではアジアのネットワークを作っていくということで、2001年からアジアコンテンポラリーダンスフェスティバルを行ってきたんですが、2001年から今の段階ですごく変わってきていると思うのが、一緒にやり取りをしている制作の方が、昔の場合は、アジアのいろいろな地域に通じるところがあるのですが、すごくヒエラルキーをイメージしているところがあって、この人に行かないとここたどりつかないという相関図を把握しておかないと、たどり着かないということがあったのですけれど、今私が一緒に仕事をしている制作者っていうのが、その辺ですごくオープンなマインドを持っている制作者が多くって、あ、なんか一緒に考えていけているな、っていう、アジアを考えているよりは、誰と出会っていっているかということだと思うんですが、アジアで一緒に色々な人と出会って考えていく場というのが作れるんじゃないかなという実感があるんですね。それを拡張していくっていうように、という風に考えています。

糸山裕子さん(福岡 アートマネジメントセンター福岡[AMCF]):福岡演劇フェスティバルの事務局長をしております。アジアとの交流について、福岡では韓国等からの交流をすでに、えだみつ演劇フェスティバルなどで持っていらっしゃるというのがあって、枝光経由で逆に福岡演劇フェスティバルの方に、向こうである小劇場フェスティバルと福岡演劇フェスティバルをつなげてできないかと話を進めていただいて、来年度以降ちょっとずつ進めようかという話になっています。その時に一つ特徴的だったのが、韓国側の方が、福岡市が関わっているので福岡市及び財団の方たちにもその話をしましょうと言ったら、それはしなくていい、と言われたんですよ。

で、民間同士の交流はやりましょう、と言われました。それはなぜかというと、行政とかが入るとどうしても、東京中心に交流が行われる。韓国でもソウルを中心に交流が行われて、それを待っていると、順番を待っていると、どんどん年数が経ってしまうので、民間のNPOと、民間の向こうのフェスティバルの場を持っている人が交流することで、具体的に前に進めていきましょうと。先に進めて、後付けで行政に入ってもらうことは可能なんじゃないかということで、二人の間で決めて、お金もそれぞれで事務的な申請書を出し進めることを決めてしまいました。

なのでスピード感からいうと、もう今すぐコ・ジュヨンさんと交流したい(笑)そういう点から言うと、マッチングするような相手をつかまえちゃったほうが早いな、それがいつも枝光の市原君は上手いなといつも感心しています。逆にこのような会ができることによって、それぞれでの情報提供を、例えば福岡で私がつかんだ情報を提供することができて、彼らは東京とつながるのではなく、地方同士でつながりたいという希望を相当強く持っていますので、そのようなことが可能かという意味で、このミーティングに関しては是非、特に地方にいるものとして是非、やっていただきたいと思います。

齋藤さん:私も鳥取で地域間の国際交流という言葉に非常に可能性を感じているので、今の話はよく分かります。国際交流という部分も先ほどの人材育成と一緒で、このネットワークが日本を代表して何かにつながっていくのではなくて、おそらくそこの、どこかの会員を通して、もしくは何かの委員会を通して、そこから国際交流に関するサブ・ネットワークが生まれていくような形がもしかしたらいいのかなと、今お話を聞いていて思いました。もう一つ、アドヴォカシーのことをもう少し何かご発言のある方はいらっしゃいますか。

ヲザキさん:実務的なことで、公共劇場というのは先ほど蔭山さんがおっしゃった通り、新規雇用というのがなかなかありません。色々な問題があります。私たちの財団、例えば私のようなチーフプロデューサーや支配人のように、ヘッドハンティングでそこに集められる専門家以外は実は全部そこの財団の職員で、いつ彼らがほかの公民館に異動させられるかわからないという人間が一緒に劇場を運営しているというのが実際の状況です。でも本当は我々劇場としては、できたら専門のスタッフを若い人から登用したいというのもあります。

と同時に、おそらく、各公共劇場が今、予算カットでぎりぎりの人材、お金でやっていて、人数も、私のお給料なんかも聞いたらびっくりするわよという位の低いお給料でやっているので。正直に言います。即戦力じゃないと本当に困ります、というようなぎりぎりの状況で各公共劇場が運営しているかと思います。というところで、横のネットワークが欲しいというのは、運営している各自治体の横の状況が分からないので、せめて少ない人数だったら専門家を育てさせてほしいというこちらの現場の意見が、なかなか通らないんですね、役所だから。

だから、そのために私が欲しいのは横の事例。他の自治体でどんな風に各劇場が運営されているかという事例をここでまとめて、それを文化庁の方に提出して、それを劇場法にからめて、公共劇場を運営するにあたっての問題点というのを、逆に文化庁から各自治体の方へ提起できるようなことが。ものすごいこれは時間がかかるかもしれないし、皆さんの力が必要かもしれないけれど。横の情報がなくてみんな困っているけれど、どうしていいか分からなくてとりあえずヘッドハンティングという。

あまり私としてはよくないけれど。若い人が入っていく隙間が全くない。公共劇場がいま若い人たちに対して受け入れることができるのは、おそらくインターンシップだけです。いま我々ができることは。それこそ横のネットワークで、あそこが空いたからあそこに行け、とみんなで紹介するくらいしかできないので、そこを何か、実際にここで動いて行ってもらえたら非常にありがたいです。

久野さん:すごく実際にやってみようっていう話なんですけれども、横浜市が、横浜市の文化芸術に関するパブリックコメントを募集しています。10月末日が締め切りです。だれも発言しなかったら姿が見えないんですよ。であるともしかしたら、望まれていないんだな、舞台芸術の人は、横浜市に対して。ってことにつながっちゃうわけですね。なので、是非みんな書き込みして送りましょう。ということが一つと、もう一つはこの政策提言、パブリックコメントが最近すごく聞く機会が多いんだけれど、どうやって提言したらいいんだろう、っていう書き方が私たちはちょっと慣れていないというか、分からないっていうのがあるじゃないですか。

やはりそれは、効果的な提言の仕方というのを是非、このミーティングでは探ってほしいなと思うんです。例えばシンガポールでもよくパブリックコメントを出すんですけれども、彼らはもうパブリックコメントの募集が始まったとたんに、ものすごいディスカッションをするんですね。すごい仲が悪いのに、一致団結するんですよ。そういう場にもなってほしいな、っていうことです。

原さん:早速やっていくということで言いますと、劇場法の指針というのが年内にパブコメが固まると思います。11月の末くらいに期限が設定されているのではないかと思うのですけれども、それはまさに、このネットワークの大きな試金石の一つになるのではないかと思っています。

齋藤さん:ほぼ時間なのでここで終わりにしたいと思うのですが、二つ、まず今日色々な意見が出たことについて、2月に設立総会を予定していまして、そこで先ほどの計画案にもありましたが、2月13日もしくは14日にTPAMをプラットフォームにして、横浜で開催する予定です。その開催の詳細はメールで告知しますので、ぜひご参加いただけたらと思います。それからもう一つ、先ほど情報共有をどうするんだ、行けなかった人はどうするんだという話がありましたが。

横堀さん:Facebookで「舞台芸術制作者ネットワークミーティング」で検索をかけていただけましたら、ページを作成しておりますので、そちらに本日の議事録を含めてアップさせようと思っています。

齋藤さん:こういう議論を通してネットワークが育っていくものだと思いますので、是非引き続き、積極的な参加をお願いできたらと思います。

横堀さん:今日は長時間にわたり、ありがとうございました。2月に横浜でお会いできることを楽しみにしております。