ON-PAM委員会2024 第一部 前半 おしゃべり会@委員会「おしゃべり会 for 地方制作者」

2025.7.15

日時:2024年3月9日(土)15:50-16:50
会場:BUKATSUDO HALL、オンライン
おしゃべりサポート:伊藤美笑子、傳田うに


ON-PAM委員会2024 第一部 前半 おしゃべり会@委員会「おしゃべり会 for 地方制作者」

今回のON-PAM委員会では、2023年に実施されたON-PAM会員提案企画「おしゃべり会 for 地方制作者」と「海外おしゃべり会」の2企画を委員会版として実施した。両企画は同時間に並行して開催し、委員会参加者はいずれかの会を選択することができる。本文では、「おしゃべり会 for 地方制作者」についてレポートする。

「おしゃべり会 for 地方制作者」とは、会員の伊藤美笑子さんが主催する『地方で舞台芸術分野の制作者としてお仕事をしている方』に特化したおしゃべり会である。首都圏に比べると地域では舞台芸術について話す機会が少なく、職場やキャリア形成、研修、鑑賞の機会も限られているという課題意識から、地域で活動する方とざっくばらんに話し合い、情報交換や相談ができる交流の場を作りたいという目的のもと、隔月でON-PAM会員提案企画として開催されている。

本会は、オンラインと現地参加を合わせて11名の方が参加した。参加者の自己紹介から始まり、オンライン参加者および現地参加者の2チームに分かれ15分間のフリートークを行い、最後に各チームで話した内容を共有し意見交換した。京都、埼玉、東京、岐阜、兵庫、北海道、愛媛と活動拠点地域も、大学生や民間小劇場、公立文化施設、制作会社から劇団制作、フリーの舞台制作者まで活動もキャリアも様々な方が集まった。15分のフリートークの後、両チームが話した内容のキーワードなどを簡単な一言で付箋に書き出し(オンライン参加者の付箋は共有アプリを活用し現地とも共有した)、出てきた数々のキーワードに対して詳細を尋ねるなど、お喋りしながら参加者と内容を共有していく。

現地参加チームでは、公立文化施設同士の連携やネットワークについて、地域と都心部の人との出会いや繋がりの特性についてなどが話された。創造発信型劇場が複数ある地域と、貸し館ベースで運営される公立文化施設が多い地域との違いについてや、その中での職員の専門性や雇用される人材の特性についても話題に挙がった。
また、複数の公立文化施設同士が連携したプロジェクトを行う際に創造型劇場が担うことができる役回りや活用できる地域でのネットワークについて、行政の仕組みに頼り過ぎない自治体間での情報共有や新たな連帯方法を思考できる可能性についてなど各参加者の経験を通した見解が交換された。

首都圏と地方を行き来してきた方の話では、首都圏は同じ業界の人がとても多い、それゆえに同じ業界の中でも様々な分野やコミュニティがありそれらを網羅するだけでも精一杯である一方で、地方では同じ業界の人も少ないぶん他分野の人たちと繋がることも多い。さらに文化や福祉、教育などの分野であれば通じ合う話もあるため、他分野と繋がることのほうが意外と文化的で広がりがあるように感じたということも話された。

オンライン参加チームでは、何を軸に地方で演劇の仕事を続けるか、地方で演劇に関わる仕事や演劇のノウハウを活用できる仕事として何があるか、そのキャリアを続けていくためにどうするかなどが話された。地方での制作者のキャリア構築には、雇用される選択肢もあれば自らプロデュースしたり劇団に関わったり、フリーの制作者として仕事を続け生きていくという方向性もある。これからキャリアをどうしていこうかと考えるときに、雇用されるイメージは出来るが、フリーランスやアーティストと並走する制作者として地方で活動を続ける場合、特に作品の作り手が少ない地域であれば都心部に拠点を移す選択を考えてしまうという話があった。

それに応答するかたちで拠点移動を経験された方からは、自らで仕事が作れるようになった頃には自身の活動の幅や、拠点を動かす必然性が見えてくるようになったことなど、拠点移動をいかにしてキャリアアップとして位置付けてきたかが話された。また、地方で活動する人にとって、オンライン参加が容易になった現状についてそのプラスとマイナスについて話された。オンラインは、現地に行けなくても参加できるメリットがある一方で、実際に会えない物足りなさや集まって話し合った後の情報交換やコミュニケーションが減ってしまっていることが難点だという。

後半では、両チームが話し合った内容を共に振り返った。舞台芸術の仕事の需要が高い地域では直接的に携わる仕事につく傾向があるが、需要がない地域では、“自分は何がやりたいのか”、”舞台芸術とはなにか”などの問いを自分自身に投げかけ、芸術や文化に対する考え方や課題感を更新し、活動のあり方を拡張する可能性があるという気づきがあった。また、拠点地域を移動しながらキャリアアップをすることについて、特に若い世代は各地で活動しながら、最終的には元々拠点としていた地域に戻ることを選択肢として持つことも良いのではないだろうか、などの意見交換で盛り上がりを見せた。

執筆:鳥井由美子