シンポジウム「施行から4年、劇場法をもっと『活用』するために」レポート
2016.11.23
2016年11月13日(日)、ロームシアター京都会議室にて、ON-PAMシンポジウム「施行から4年、劇場法をもっと『活用』するために」が開催されました。ON-PAMが今年度重点的に取り組んでいる「政策提言」の先行事例として、議員立法として2012年に施行された「劇場法」をテーマとしたシンポジウムです。
第1部は日本芸能実演家団体協議会(通称:芸団協)の米屋尚子さんをお招きし、基調講演として「劇場法制定に至る背景とその意図」をお話しいただきました。90年代から芸団協では、公立文化施設における芸術活動の根拠となる法整備への取り組みはスタートしており、途中過程での芸能基本法の検討、劇場プロジェクトチームの設置、劇場等演出空間運用基準協議会の設立など、複数の調査・提言活動を経たのち、「実演芸術の将来ビジョン2010」にて「実演芸術の創造、公演、普及を促進する拠点」としての劇場を整備する提言に至っています。
また、現在の課題として、文化施設の劇場・音楽堂等としての機能が十分に発揮されていないこと、地方では多彩な実演芸術に触れる機会が相対的に少ないことなどが指摘され、「法制定の趣旨、課題の克服への手だては適切か」「実演芸術が今日本で果たすべき役割を劇場は拠点として担っていけるだろうか」といった問題提起がされました。
第2部では「施行後の現状と、今後の活用について」と題したパネル・ディスカッションを実施。米屋さんのほか、宮崎刀史紀さん(ロームシアター京都)、松浦茂之さん(三重県文化会館)をお迎えしてお話を伺いました。登壇者の方々からは、劇場法ができたことによるプラスの評価として「根拠法が無いという異常な状態から、根拠ができた」「事業のカテゴリーが第三条に明記された」「活性される劇場が、ますます活性化されるのに活きている」「あり方検討会で議論されている劇場があることで、この法律が活用されざるをえないことになっている」「法律ができると、言葉遣いを共有出来る」「情報交換の場として、劇場音楽堂等連絡協議会ができた」と言ったことがあがる一方で、「この法律が現場に制限や後押しを加えるという構造になっていない」「二千数百館の中、劇場法でうたわれた内容を実践できている劇場・音楽堂はごく少数である」という課題が指摘されます。
その後の質疑応答では、主に以下のような点が話されました。
作品作りと観客作りの関係
・地元のアマチュア団体向けか、プロ向けか。
・社会包摂をしていないと劇場じゃない、という極端な意見も出てくるようになった。文化の専門機関ということが重要で、その一つとして社会包摂にもある、と捉えるべきでは。
・第3条の何項に書いてあるからではなく、職員が意義を感じて本気でやれるかどうかが重要である。
資格制度について
・公共体で働く専門性を担保することを目的とした、プロデューサーなどの最低限の資格化をどのように考えるべきか。
・専門性が担保されることで、人材の流動性は向上するのでは。
雇用の問題
・公共劇場の就労環境調査では、スタッフの人たちの厳しい実態が見え、作品が作れるようになった陰で、シワ寄せがいっていることが伺える。
・創造活動は労働にしてはいけない部分があり、そこをどう切り分けられるか。
組織改善の問題
・組織の硬直化に対して、解決へのビジョンはあるか。
・長期ビジョンを持ち、職員提案による事業の改善・効率化や、研修など制度を取り入れていく必要がある。
芸術団体と劇場の関係
・全国的に、劇場を拠点としている芸術団体が出てきていない。
・芸術団体と劇場がどのような関係を切り結べるか。芸術団体で作られたものと提携をしていく、そこの模索がより必要。
芸術自体の価値の担保
・ある社会的課題のために文化を活かしていこう、ということは財源とのバランスを鑑みながら、公共政策の中で位置づけられていく。
・一方で、芸術自体の価値をどのように担保できるかを我々は考えなければならないのでは。
「いかに劇場法を活用できるのかは、現場で活動をしている制作者が考えるべきことの一つ」「劇場法を活用するためにどうしたら良いか、ON-PAMとして継続して考えていくべき」という言葉が出たように、具体的に事業をしている方から多く課題や提案を聞くことができたシンポジウムとなりました。シンポジウムの詳細は後日、レポートをアップする予定です!