ON-PAM アジア会議 in シンガポール 3日目

2017.9.7

2017年9月5日(火)

今日はナショナル・アーツ・カウンシル(National Arts Council, NAC)、多くの劇場やアートセンターに加え、2014年からシンガポール国際演劇祭などを運営している​アーツ・ハウス・リミテッド(Arts House Limited)、数少ないマレー系の劇団の一つで、日本の戦時中のプロパガンダ映画をもとにハリマオこと谷豊を扱うアルフィアン・サアット作『マライの虎』を製作中のシアター・エカマトラ(Theatre Ekamatra)、1990年にシンガポールを代表する劇作家クオ・パオクンによって創立された劇場・アートスペースであるザ・サブステーション(The Substation)を訪問。


 


 

 

何より印象的だったのは、NACで聞いた言葉。「シンガポールでは人口が小さいので舞台芸術を商業的に成り立たせるのは難しい。 だから継続的な活動が成り立つには、政府の支援が必要になる。」 シンガポールの舞台芸術は、かなりの部分が大なり小なり政府の支援を受けて成り立っているように見える。NACが入居しているグッドマン・アーツ・センター(元小学校とのことだが、敷地も建物もかなり大きなもの)は数多くの劇団やダンスカンパニーにスタジオを提供している。ザ・サブステーションも、政府に批判的な作品も上演されてきた場所だが、所有しているのは政府。

シンガポール政府は、とりわけ「国民アイデンティティの創出」のために芸術活動の支援を行ってきた。シンガポールとはどんな国なのか。シンガポール人とは何か。どうすれば住民が自分を(華人、マレー人、インド人ではなく)「シンガポール人」だと思えるようになるのか。どうすればそれに誇りをもち、建国50周年を迎えたばかりのシンガポールという国を、居心地のよい自分の「故郷」だと思ってくれるようになるのか。
NACがかつて直接に運営していた「シンガポール芸術祭」は、2014年から民間のアーツ・ハウス・リミテッドに委託され、「シンガポール国際芸術祭」となって、オン・ケンセンが4年間芸術監督を務めてきた。来年からスタッフはかなり変わるようだが、アーツ・ハウス・リミテッドへの委託は継続される。シンガポールを代表する国立劇場であるエスプラネードからアーツ・ハウス・リミテッドに移ってきたスタッフも少なくない。シンガポールの舞台芸術の未来を担う方々と出会うことができた。

夜、オン・ケンセン率いるシアターワークスの拠点「72-13」で「批判的動物学者協会(Institute of Critcal Zoologists)」(シンガポール)による『博物館(The Nature Museum)』を観劇。