参加者募集中|連続公開研究会「文化政策からみた人権論」
2025.10.7
連続公開研究会「文化政策からみた人権論」(全5回)
ここ最近、「人権」に関する議論を見かけることが増えたような気がしませんか。「文化」「芸術」「アート」と「人権」というテーマの組み合わせについても、ここ数年、とりわけコロナ禍以降、関心が高まってきたのではないでしょうか。
小説『アンクル・トムの小屋』がアメリカの奴隷解放運動を後押ししたと言われるように、文化やアートは時として、人権をめぐる議論の展開に大きな影響を与えてきました。「人権」がいっそう重視されつつある今日、文化や芸術に関心を持っている方々に向けて、「人権」についての公開研究会を開催して議論を共有し、今の時代の文化や芸術からみた新たな人権論の構築の手がかりを探求する場を開きたいと思います。
報告者:中村美帆
コメンテーター:各回1~2名
◎第3回〜第5回の実施詳細について公開しました(10/29更新)
【実施方法】
オンライン(Zoomウェビナー)
※UDトークによる日本語字幕配信を行います。
※アーカイブ動画の公開はございません。
※参加者多数のため、Zoomミーティングではなくウェビナーでの開催に変更いたします。(10/29更新)
【参加費】無料
- 要事前申し込み
- 各回終了後のアンケート(匿名)へのご協力をお願いいたします。
- 終了後のアンケート(匿名)の回答内容は、科研費(課題番号:24K15955)の研究に使用させていただきます。また、第5回の研究会で回答を匿名でご紹介させていただく可能性がございます。
※アンケート調査は自由参加であり、回答しなくても不利益はありません。また、途中で中断することも可能です。
差しさわりのない範囲で、ご協力をお願い申し上げます。
【対象】
アートマネジメント、文化・芸術政策、文化・芸術産業に関わる方/上記に関心のある学生、研究者/文化・芸術の鑑賞者、支援者など
【実施日時】
第1回:11月5日(水)19:00〜20:30「文化権と人権の歴史 ―文化政策からみた人権論の可能性―」
第2回:11月26日(水)19:00〜20:30「文化政策からみた社会権? ―環境整備の具体化を問う―」
第3回:12月3日(水)19:00〜20:30「文化政策からみた第三世代の人権論?―「参加」について考える―」
第4回:2026年1月13日(火)19:00〜20:30「文化政策からみた自由権?―何からの自由が必要か―」
第5回:2026年1月30日(金)18:00〜19:30「振り返りと考察 ―あらためて、文化政策からみた人権論の可能性―」
※第5回のみ18:00開始となります。
【参加申込フォーム】
https://24k15955.peatix.com
【申込締切】
各回当日12:00まで
※リアルタイム配信のみ。アーカイブ動画の公開はございません。
※お申込み後、各回当日17:00ごろまでに視聴用Zoomアドレスをお送りいたします。
【各回概要】
第1回「文化権と人権の歴史 ―文化政策からみた人権論の可能性― 」
■日時
11月5日(水)19:00〜20:30
■内容
文化権(cultural right)は、今日の文化政策の基本理念の1つで、第二次世界大戦以降に国際社会で議論されるようになった新しい人権の1つです。創造や享受をはじめ、さまざまなかたちで自らの望む文化に関わりを持つことは、一部の恵まれた人々の特権や贅沢ではなく、人間である以上当然に望んでよいはずだ。そのような考え方が、文化を人権として考えようとする文化権の理念の基底にあります。
コロナ以降、文化・芸術に関わる人・関心を持っている人に向けた文化権に関するレクチャーの依頼が明らかに増えた実感があります。レクチャーの場での参加者とのやりとりを通じて、文化権ひいては人権そのものについて、説明しながら理解が深まったり、新たな疑問が浮かんだり、様々な発見がありました。そのようなワーク・オン・プログレスの議論の場を複数回設けて議論を掘り下げることで、文化権や人権について、新たな発見が得られるのではないか。その着想が、今回の連続公開研究会の企画につながりました。
第1回では、文化権概論のレクチャーを改めて実施して前提を共有し、議論の出発点として論点整理を試みます。
■コメンテーター
若林朋子(プロジェクト・コーディネーター/立教大学大学院社会デザイン研究科特任教授)
■プロフィール
1999~2013年、企業メセナ協議会でプログラム・オフィサーとして企業が行う文化活動の推進と芸術支援の環境整備に従事。13年よりフリー。企画コーディネート、非営利法人運営や自治体文化政策、企業文化活動等の支援に取り組む。16年より社会人大学院教員。社会デザインの領域で文化、アートの可能性を探る。社会のデザインに不可欠な文化権を扱う「文化政策論」の授業で、念願の中村美帆さんのゲスト講義「文化権概論」が今年実現した。
第2回「文化政策からみた社会権? ―環境整備の具体化を問う― 」
■日時
11月26日(水)19:00〜20:30
■内容
文化芸術基本法の2条3項では、「文化芸術に関する施策の推進に当たっては, 文化芸術を創造し, 享受することが人々の生まれながらの権利であることに鑑み, 国民がその年齢, 障害の有無, 経済的な状況又は居住する地域にかかわらず等しく, 文化芸術を鑑賞し, これに参加し, 又はこれを創造することができるような環境の整備が図られなければならない。」と規定されています。その基本理念をふまえた今日の文化政策では、国の責務として、文化芸術に関する施策を総合的に策定・実施し、ハード・ソフト両方の面での環境整備に努めていくことが求められています。
2条3項の文言のなかでも「経済的状況」については、研究・実務両方において、正面から議論されにくい面もあります。今回は美術館を事例に、「経済的状況」に起因する困難に文化政策がどのように向き合えるか、なるべく具体的に考えてみたいと思います。
■コメンテーター
河合克義(明治学院大学名誉教授・学長特別補佐)
■プロフィール
現在、葛飾区介護保険事業審議会会長、港区地域包括ケア推進会議会長、東京都生活協同組合連合会理事などを仰せつかっている。主な業績として(1)編著『「健康で文化的な生活」をすべての人に-憲法25条の探求-』自治体研究社、2022年、(2)『健康で文化的な生活とは何か-全国生活と健康を守る会連合会会員および全日本民主医療機関連合会共同組織の生活と意識に関する調査報告書-』全生連・全日本民医連、2020年等。
第3回「文化政策からみた第三世代の人権論?―「参加」について考える―」
■日時
12月3日(水)19:00〜20:30
■内容
人権論では、自由権(第1世代の人権)、社会権(第2世代の人権)に対して民族自決権、平和に生きる権利、よい環境で生きる権利、発展の権利など、第3世代の人権と呼ぶべき新しい考え方も提唱されつつあります。文化権を考えるにあたっても、自由権的な部分と社会権的な部分の両方を併せ持つ権利とし て考えることの重要性は、1990 年代から指摘されてきました。さらに、自由権・社会権という伝統的な権利区分には収まりきらない文化権の論点も提示されてきています。 自由権、社会権の重要性を認識しつつも、その2つのシンプルな区分に収まらない文化と人権について、 第3回では「参加」を手がかりに考えてみたいと思います。
■コメンテーター
横堀ふみ(NPO法人DANCE BOX プログラム・ディレクター)
■プロフィール
神戸・新長田在住。劇場Art Theater dB神戸が活動拠点。ダンス・プログラムを中心に、ほぼ全ての作品/企画を新長田での滞在制作によって実施する。同時に、世界の様々な地域をルーツとする多文化が混在する新長田にて、独自の国際プログラムを志向する。日越の文化芸術交流を目指したユニット「VIAN」メンバー。「下町芸術祭」実行委員。新長田アートマフィア仕掛人・構成員。ON-PAM(舞台芸術制作者オープンネットワーク)理事。
第4回「文化政策からみた自由権?―何からの自由が必要か―」
■日時
2026年1月13日(火)19:00〜20:30
■内容
2017年に改正された文化芸術基本法では、前文に「文化芸術の礎たる表現の自由の重要性を深く認識し」という一節が追加されました。日本国憲法第 21条の「表現の自由」は、第2項で検閲の禁止を定めています。文化政策の歴史をふりかえっても、国家・政府・行政が文化や芸術の表現内容に干渉することの弊害、そのような事態を引き起こさないための警戒は重要な論点です。 干渉を排除する「〜からの自由」という考え方は、社会権のような国家による権利実現を求める積極的自由に対し、消極的自由とも呼ばれます。戦後憲法学においては、国家による人権侵害を警戒し、そのよう な国家の不当な権力行使を制約するために、表現の自由をはじめとする消極的自由の議論が積み重ねられてきました。憲法学における表現の自由の主たる関心は、国家・政府からの自由だったと言えます。文化政策において文化や芸術の表現内容への不当な干渉を防ぐ方策を考えるにあたり、警戒すべき相手は国家・政府だけで十分でしょうか。あるいは国家・政府・行政以外からの侵害に抵抗できるような思想を議論することも、文化政策においては必要でしょうか。
第4回では、従来の憲法学とは異なる人権研究のアプローチから学びつつ、改めて文化・芸術における 「自由」について考えてみたいと思います。
■コメンテーター
森島豊(青山学院大学総合文化政策学部教授・大学宗教主任)
■プロフィール
専門はキリスト教人権思想史と近代日本思想史。「人権」という考え方と法制化のプロセスを思想史的に考察し、日本と欧米の人権理解の特徴と相違を明らかにしました。中外日報社『涙骨賞』最優秀賞受賞(2015年)。青山学院学術賞(2021年)。著書として『人権思想とキリスト教』(2016年)、『抵抗権と人権の思想史』(2020年)、『日本の教育政策とキリスト教学校』(編著、2025年)等多数。プリンストン神学校客員研究員(2023-2024年)。
第5回「振り返りと考察 ―あらためて、文化政策からみた人権論の可能性―」
■日時
2026年1月30日(金)18:00〜19:30 ※この日のみ18時開始となります。
■内容
本連続公開研究会は、科研費(課題番号:24K15955)の研究の一環として実施し、各回終了後にはアンケート(匿名)へのご協力もお願いしてきました。その一連のプロセスを通じて研究会主催者として得られた気づきを整理・共有し、文化・芸術に関わる立場からみた新たな人権論の構築の手がかりについて 議論を深めたいと思います。
■コメンテーター
久保田翠(認定NPO 法人クリエイティブサポートレッツ理事長)
吉野さつき(愛知大学文学部 人文社会学科 現代文化コース メディア芸術専攻 教授)
■プロフィール
▽久保田翠
東京藝術大学大学院美術研究科修了後、環境デザインの仕事に従事。重度知的障害のある長男の出産をきっかけに、2000年にクリエイティブサポートレッツ設立。2010年障害福祉サービス事業所アルス・ノヴァ開設。2016年『表現未満、』プロジェクトスタート。2018年たけし文化センター連尺町建設、2022年浜松ちまた公民館開所。2017年度芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。2022年度静岡県文化奨励賞受賞。
▽吉野さつき
アーツ・マネージャー、愛知大学文学部人文社会学科現代文化コースメディア芸術専攻教授。英国シティ大学大学院でアーツ・マネジメントを学び、公立劇場勤務、英国での研修(文化庁派遣芸術家在外研修員)を経て教育、福祉等の場での芸術を用いた活動や、アウトリーチ事業、コミュニティアーツプログラム、ワークショップ等の企画運営を担う人材育成に各地で携わる。2022年度より障害者文化芸術活動推進有識者会議構成員。
■報告者
中村美帆(青山学院大学総合文化政策学部 准教授)
東京大学法学部卒、同大学院人文社会系研究科文化資源学研究専攻(文化経営学)博士課程単位取得満期退学、博士(文学)。静岡文化芸術大学文化政策学部准教授を経て、2022年4月より現職。主著に『文化的に生きる権利-文化政策研究からみた憲法第二十五条の可能性』 (春風社、2021年)、『法から学ぶ文化政策』(共著、有斐閣、2021年)、『自治体文化行政レッスン55』(共著、美学出版、2022年)など。
主催:青山学院大学総合文化政策学部中村美帆研究室
※本公開研究会はJSPS科研費JP24K15955の助成を受けたものです。
研究会運営:特定非営利活動法人舞台芸術制作者オープンネットワーク
【お問合せ】
研究会運営:舞台芸術制作者オープンネットワーク(ON-PAM)
info@onpam.net
【ご案内:報道や情報に触れて つらくなったら】
本研究会およびアンケートに触れたことがきっかけで気持ちがつらい状態になってしまった場合は、下記ウェブサイトもご参照ください。
こころのオンライン避難所 https://jscp.or.jp/lp/selfcare/