Co-Creation Camp by Next Producers Meeting 公開セッション Camp-1 レポート
2024.12.25
日時:2023年7月14日(金)〜16日(日)
会場:YAU STUDIO
Camp−1スケジュール
7月14日(金)
・レクチャー「誤解なき「心理的安全性」と「チームの多様性」のためのレクチャー」
講師:植松侑子
・ワークショップ「他人に目標を立ててもらう『タニモク』」
ファシリテータ:谷陽歩
・参加者交流会
7月15日(土)
・ワークショップ「アートマネージャーの視野・視点をケーススタディーする」
ファシリテーター:坂本もも
・ディスカッション「アーティストの視野・視点をケーススタディーする」
登壇者:y/n、小野彩加 中澤陽 スペースノットブランク、円盤に乗る派
7月16日(日)
・ライトニングトーク…1、2日目のインプットをふまえ、自身のチームについて短いプレゼンテーション(ライトニングトーク)を実施。
登壇者:
チーム白昼夢…大蔵麻月(制作)、石坂雷雨(主宰/演出)、米山昂(脚本)
チーム譜面絵画…大川あやの(制作)、河﨑正太郎(制作)、三橋亮太(演劇作家)
・ラップアップ
Co-Creation Camp
共創するアートマネージャーとアーティストのための「Co-Creation Camp」(CCC)は、公演や作品創作プロセスの中で協働するアートマネージャー(制作)とアーティスト(演出家や脚本家)のチームを対象に、有楽町(東京)、豊岡(兵庫)にて開催した。お互いを知り、可能性を広げるためのレクチャー、ワークショップを中心としたプログラムで構成された。
CCC Camp-1 有楽町
植松侑子氏によるレクチャー「心理的安全性を知る」から1日目が開始。ここでは、創作現場においての安全性を保つための考え方や意識の持ち方の必要性について考える時間となった。まず、チームとは特定の目的を持って物事を改善していく為の組織であり、ただの人の集まりではないという定義が説明された。同じ目的を掲げているグループでは、似た境遇や属性の人が集まることがあるが、その場合、多角的な視点が欠ける原因にもなるという。
目的によって集まるべきメンバーが変わること、そして、それぞれ役割があることにより組織にはヒエラルキーが必ず存在するということが確認された。その中で、何も言えないという環境は心理的安全性があるとは言えない、と強調したうえで、誤解されることあるが、誰の意見にも反対せず、誰に対しても空気を読んで忖度するべき状況ではなく、また何でもかんでも言いたいことを言い合える環境とも違い、言い辛いけど言わないといけないことを言えるチームこそが心理的安全性がある組織だという。
多様性を尊重することとは、組織の人全員を好きになることではなく、知らない、出来ない、やってみようと言える環境こそ、心理的安全性が保たれていると説明。参加者からの質疑では、それぞれの立場や状況において具体的なアドバイスを植松氏に仰いだ。より良い創造環境を作ろうとしている参加者にとって、具体性があるレクチャーとなった。
次に開催された、谷陽歩氏によるワークショップ「他人に目標を立ててもらう『タニモク』」は、パーソナルキャリアによるワークを基に展開された。3人または4人組になり、相手の話を聞き、自分がその人だったらどんな将来を描くか、その為の具体策を考えるワークショップ。ワークでは、1人目のメンバーが自己紹介と、自分の活動について他のメンバーに説明をする。その後、他のメンバーからなぜその活動をしているか、どんな想いがあるのか、何に興味があるのかインタビューを受けとるというもの。
自己紹介とインタビューを経て、他のメンバーは、その人になったつもりで、私があなただったら持つ将来の目標を絵に描いてプレゼンし終了。他の人がその人になりきることで、本人が気が付きにくい将来象や、他者から見て面白いと思う視点などが将来の目標に盛り込まれているなど、自分の興味がどこに向いているのか、意外なポイントに気が付くことができる面白いワークショップであった。
2日目は「アートマネージャーの視野・視点をケーススタディーする」」として、坂本もも氏による「ここちよい創造環境を考える」ワークショップを実施。まずは自分にとってここちよい創造環境の要素を付箋に書き出し、その後チーム毎に、長期的/短期的/全体的/個人的という4つの軸に分類していく。さらに各チームの中で似ているもの同士で分類。例えば、更衣室がある、冷暖房が完備されている等が挙げられ、それらは設備というカテゴリに分類された。似ているようで、実は物理的な問題と生理的な問題に分かれる事柄が出てきて、自分にとってのここちよさとは何かに気が付くことができる時間となった。分類分けをした後は、各チームの発表を聞き、同じような点を課題と感じていることが判明したり、見落としていた事柄に気が付くことができた。
後半には、アーティストとアートマネージャーの既存の関係性にとらわれないチームを形成する3組をゲストスピーカーに招き、ディスカッションを行った。参加のグループは共創をしているチームであることからお互いの関係性について質問を投げかけ合い、自分たちはどのように取り組んでいるか紹介された。同じグループでもメンバー同士丁寧に関係性を築いていることが分かり、伝えること、聞くこと、そして話し合うことが大切なのだと感じられる時間となった。
東京キャンプの最終日は、参加者が自身のチームについてプレゼンテーションを実施。
白昼夢は、教室公演と呼ばれる大学の教室を使用した0回公演から活動が始まり、学園祭での紙芝居パフォーマンスや、大学内の劇場で作品を上演してきた。在学中に参加、受賞した学生演劇祭で他校の学生と出会い、以後の白昼夢の作品に俳優として出演してもらい、劇団員になったメンバーもいる。街中でのゲリラ公演では、街ゆく人の反応の違いを実感し、またコンクールへの参加・受賞では、演出に対する想いを再認識するきっかけとなったそう。その後、活動を続けていくかどうか悩み、一度は活動を休止したが、再開を決めた時にコロナウイルスが流行し、再び活動休止となった。休止中には劇団員からの呼びかけで話し合いを重ねたことが活動再開に繋がったと話された。
譜面絵画は脚本・演出家・俳優・制作の6名からなる劇団で、新たな体験性、ライブ性を制作目的として、演劇的想像力を介して誘発および展開するための作品を発表している。教室や学園祭など活動当初から劇場以外での作品上演を数多く行い、画廊で上演した作品をきっかけに場所へのこだわりを持ち続けている。その後の上演作品からテーマに生や死を扱うようになり、コロナ禍での一年間の活動休止を経て、新たなスタイルでの作品発表へと至った。戯曲を音楽アルバムのように先に発表し、上演していくというプロセスが特徴的。今後は、場所の力を信じて人の想像力をいかにして喚起できるかが目標と話す。今回、活動を振り返ってみることでチームメンバーやスタッフとの長く続いている関係性を大切にして上演していきたいと感じたという。
お互いの活動についての話を聞く時間では、白昼夢は何がきっかけで紙芝居を始めたかという質問に対して、劇団の宣伝になり、お客さんがラフに見れるパフォーマンスは何かを考えたことがきっかけだったと応答。紙芝居に出てくる雲人間は白昼夢のキャラクターで、絶えず形が変わっていく雲と、演劇に共通点を感じて出来たという。演出と脚本家が分かれていて、体と言葉をどのように捉えて創作しているのかという質問に、米山氏は脚本を書く際にト書きも含めその物語の中の世界で起こっていることをそのまま書いていると話され、稽古していく中で役者の身体性から演出が見えてくるようなイメージが共有された。
以前は、石坂氏が脚本・演出どちらも担い、演出を想像した上で脚本を書いていたが、現在は稽古中にお互いが想定していなかった発見が生まれ、面白いそう。劇中のダンスシーンは他とは分けて、振付家との相談のもと創作される。当初俳優として作品に出演していた制作の大蔵氏へ制作者になった理由を問う質問では、元々、演劇をやりたい想いから俳優だけでなく演出部にも携り、俳優を続けていくか悩んでいた際に、制作としての活動の提案を受けて、制作として演劇に関わることを決めたという。その頃、久しぶりに白昼夢の作品を観て面白いと思い、これを他の人にも観てもらわないといけないと思い制作として合流した。
譜面絵画への質問で、劇場ではない上演会場をどうやって見つけているか、というものには、大まかなテーマを持って会場を探した後、リサーチを重ね、その場所でやれることを考えていくと回答。その場所で起こりそうな会話やエピソードがイメージできるか、テーマと空間との親和性、あるいはこんなギャップがあれば面白いと思える場所に魅力を感じるそう。劇場は場所(空間)としての個性が感じられにくいので、以前は劇場で上演することにあまり惹かれていなかったが、劇場での上演も行っている今となっては、劇場が守られた空間であることに安心しているという変化もあったという。
最近の作品にて、能の手法も取り入れているが、きっかけは何かという質問には、3.11以降、そしてコロナ禍を経て、どんな文脈を持って死者との対峙が出来るかを考えていた。能の手法を用いて、シリアスとシリアスの間の感覚で創作が出来ると思っているとのこと。お互いのプレゼンテーションを通して、新たな発見や創作において気になることをじっくり意見が交わされた。Camp-1を通して、参加した2団体の過去に掲げてきたテーマや遍歴を辿り、そして現在地を確認できたと感じた。2組で発表し合うことでお互いの考えを共有でき、自己を見つめ直しながらも他者視点での気付きが得られる3日間となった。
執筆:松波春奈