YPAMラウンドテーブル Next Producers Meeting 2023 in 横浜 レポート
2024.12.25
日時:2023年12月13日(水)11:00 -11:45
会場:男女共同参画センター横浜南 フォーラム南太田 大会議室
スピーカー:
坂本もも(ON-PAM理事、ロロ/範宙遊泳 プロデューサー、合同会社範宙遊泳 代表社員、多摩美術大学演劇舞踊デザイン学科 非常勤講師)
大蔵麻月(theater apartment complex libido:/白昼夢 制作)
大川あやの(譜面絵画制作)
河﨑正太郎(譜面絵画制作)
ラウンドテーブル:Next Producers Meeting 2023 in 横浜
共創するアートマネージャーとアーティストのための、Co-Creation Camp(CCC)。東京と豊岡でのプログラムを経て、本ラウンドテーブルは、CCCに参加した制作者同士が、振り返りと今後のビジョンを話し合う時間として設けられた。登壇者は、大蔵麻月(theater apartment complex libido:/白昼夢 制作)と、大川あやの(譜面絵画 制作)、河﨑正太郎(譜面絵画 制作)。ファシリテーターは、運営チームである、坂本ももが担当した。
「CCCを経て、チームのあり方や個人の意識に変化はあったか。」冒頭で、坂本が登壇者に投げかけた問いである。白昼夢の制作を務める大蔵は「メンバー同士で対話を重ねる機会に恵まれ、お互いをよく知ることができた。後に実施した公演では、団員の考えや行動を先回りして想像するようになり、自身の役割を明確にできた」と答えた。大川は、CCC内で、自身の団体(譜面絵画)についてプレゼンテーションを行った経験が役に立っているという。今後どのようなクリエーションをしていきたいのか。これまで互いが何となく抱えていた共通認識を、しっかりと言葉にでき、チームで目指している道を捉えやすくなったそうだ。共に譜面絵画の制作を担う河﨑も、これらの言語化がグランドデザイン(団体活動の長期計画)に活かされている、また、団体内で話し合いをする頻度も増えたと答えた。
3人とも前向きな変化を口にしていたが、譜面絵画では各メンバーの居住地が離れている理由から、演劇活動を続けることと、生活を維持していくことへのバランスの取り方には、引き続き課題が残るという(大川は瀬戸内海の島に住んでおり、他のメンバーは関東に住んでいるものの、東京・千葉・埼玉と、それぞれに若干の距離がある)。
大蔵は、白昼夢は居住地の問題はないものの、過去の創作活動の経験から、現在は年1回の演劇公演をベースとして生活とのバランスを調整していると話した。それを受けて坂本が、「チーム全員が、少ない公演数であることを納得しているのか」尋ねたところ、大蔵は、団員それぞれの意思を尊重したいので、よりひろい活動を行いたい人は、白昼夢の名義で小さなコンテンツを生み出す流れをつくれないか、その可能性を模索していると答えた。
坂本も同様に、自身の団体においても本公演以外の演劇活動の可能性を考えていると所感を述べたところで、公演形態についての話題がさらに続く。譜面絵画でも小規模の舞台を団体の主流コンテンツのひとつにできないかという話が出ているようだ。また河﨑は、このラウンドテーブルを実施しているYPAMのショーケースを例にあげて、このように多方面からアーティストや制作者らが集まる場で、短めのパフォーマンスができることは、様々な新しい出逢いに恵まれるので貴重であると話した。
坂本は、公共劇場による企画性のある「場」づくりが一層必要かもしれないと言及しつつも、団体自身が主体となってコラボレーションを実施する可能性の有無について投げかける。すると3人とも、周囲でそういった話は出ているが、なかなか実現には至っていないと、答えが共通した。各々の団体が全力で自走している渦中なので、協働へ移行することへの一歩を踏み出しづらいのだそう。
しかし大川は、団体同士が一緒になって公演をつくることで、事務方が行う膨大な作業をわけあえるのは有難いと、メリットをあげ、そういった上演方法は、これから増えていくのではないかと、自身の団体の未来も明るく描く様子で、嬉しそうに話していた。坂本も、国際協働では全く知らない劇団同士が一緒に創作することが当たり前だと述べ、国内でも頻繁にコラボレーションが行われるようになったら面白そうですねと、前向きに応答した。
終わりに近づき、次は、各個人の活動に対するビジョンを語ることに。大蔵は、今は白昼夢の活動を深めていくこと自体が、個人としても取り組みたいことであると話す。大川は、居住地が離れていることにより現場に行きづらいという悩みをこぼしながらも、今の生活環境が気に入っている様子で、生活とのバランスを取りながら今後も譜面絵画の制作をつづけたいと、想いを述べた。河﨑は、大学卒業後、劇場での勤務を経て退職し、本年度からフリーランスとして働いている。譜面絵画の制作のほか、他団体の公演の当日運営や芸術祭の事務局員としても活動した。自身の団体を運営したいという意志を第一に持ちながらも、他の団体の運営協力等、舞台芸術活動にひろく関心があるそうだ。
最後に坂本が、これらのビジョンを実現していくためには、どう行動していくと良いか、既に実践していることなどはあるかと、3人に問う。大蔵は、制作の勉強をしたいと周りに言い続けたことで、仕事を得ることができたと過去の経験を話す。すると河﨑も、フリーランスで仕事を始めてから、自分が何者で何をしたいかを周囲によく伝えるようにしたことで、それが実を結んでいる気がすると答えた。大川も2人の発言に深くうなずく。
「今後のキャリアを深めていくにあたり、“やりたいことを積極的に伝えていく”というのは、大切なことですね」と坂本が述べ、本ラウンドテーブルは締めくくられた。参加者それぞれが、CCCでの経験を着実に自分の活動に活かしていることが伝わり、今後の共創を明るく見据えていると感じさせる、充実したディスカッションであった。
執筆:臼田菜南