Next Producers Meeting in 豊岡 2023 レポート
2025.5.23
日時:2023年9月16日(土) 11:00-13:00
会場:まちの基地アンテナ(豊岡市中央町1-4 ハラマキビル1F)
スピーカー:
目澤芙裕子(ダンスカンパニーBaobabプロデューサー、有限会社ゴーチ・ブラザーズ、マネージャー、制作、合同会社Wint2代表)
新田幸生(プロデューサー、合同会社妥当解釈代表)
ファシリテーター:坂本もも(ON-PAM理事、範宙遊泳プロデューサー、ロロ制作、合同会社範宙遊泳代表)
Next Producers Meeting in 豊岡 2023
次世代の舞台芸術制作者/アートマネージャーの環境整備を目的に企画したNext Producers Meeting。今回は豊岡演劇祭との連携プログラムとして、国際的な活動やキャリアについて話すトークセッションを開催。海外の関係者とのネットワーキングや国際交流事業を行っている目澤芙裕子氏と新田幸生氏をゲストスピーカーに招き、これまでの経験や取り組まれている国際交流プロジェクトについて語られた。
はじめに、舞台芸術制作者/アートマネージャーとして、どのようにキャリアを築いてきたか、ゲストの2人に聞いた。マネジメント・プロデューサー・ダンサーとして活動する目澤氏は、幼少の頃オランダでダンスをしていた経験からノンバーバルコミュニケーションの魅力に気付き、桜美林大学でコンテンポラリーダンスを学んだ。卒業後、同期の北尾亘が立ち上げたBaobabに加入し、一緒に活動をしていくなかでカンパニーの制作を始めるようになった。Baobabの活動のほか、文学座やゴーチ・ブラザーズで俳優のマネジメント業務を行い、フリーランスに転身後は海外招聘公演の制作業務などにも携わる。現在は、自身で法人を立ち上げ劇場やフェスティバルの仕事へと展開している。
新田氏は、台湾の大学でヒップホップのダンスを始めたことをきっかけに、台北芸術大学大学院のアートマネージメントコースに入り、舞台芸術の制作の仕事を学んだ。その後、劇団のプロデューサーや、台北フリンジ、台北芸術祭のプロデューサーとして活動。日本ではYPAM(横浜国際舞台芸術ミーティング)や日台のアーティストの共同制作のプロデュースを行うなど日本と台湾を行ったり来たりして仕事をしている。2020年-2023年まで、台北近郊にあるCloud Gate Theatre のシアターマネージャーとして活動中。
そして、両氏が運営チームとして参加しているAPP(Asian Producers’ Platform )について話された。2人はAPPキャンプに参加し、その経験が制作としての人生を変えるきっかけとなったという。新田氏は、APPキャンプで実施したディスカッションで、「プロデューサーとは何か」を語り合った際に、プロデューサーの生き方がとても多様だと感じたことを振り返る。最初に参加した時には、各国からライブハウスを運営しながら活動する人や、国際フェスティバルに参加している人、社会運動をリードしているプロデューサーがいたりと多様な人が集まっていたことに驚いたという。APPキャンプは、国際的なプロデューサー達が集い、情報交換をしたり共同制作のサポートができるシステムとして機能しているが、それだけでなく、各地で孤独に働くプロデューサー同士が心のケアをし合えることが印象的だと語った。
目澤氏からは、APPキャンプでの出会いはプロジェクトを通じた関係性とは異なり、利害関係のない交流が魅力だと話された。また、プロデューサーの育成には時間がかかると言い、人材育成の側面も持つAPPキャンプの継続の重要性を強調した。
後半は、進行の坂本もも氏から質問が投げかけられた。まずは、それぞれのアイデンティティとルーツが海外にあることが舞台芸術の仕事に繋るきっかけになったかについて聞いた。目澤氏はダンスが自分のルーツであること、オランダのダンス教室で言葉がわからなくても楽しかったことが、今の活動に繋がっていると話した。プロデューサーになりたいという考えは当初はあまりなく、ダンスをどう続けられるかをずっと考えてきたという。
新田氏は国際事業を行っていたときに、1回の公演で観客との関係性が終わってしまうという課題意識から「長期的な関係をつくるなど、自分でマネジメントできる立場になりたい」と考えるようになった。フリーランスとなり、アーティストや観客も巻き込んだかたちで複数年かけて行う国際共同制作に取り組んでいる。また、プロデューサーとして現場から少し離れる力や、働くペースのバランスの取り方についても言及された。
坂本氏から、アーティストとどう関わっているのかについて尋ねられると、新田氏は国際交流事業をする時も、アーティストを巻き込みながら一緒に作っていると話し、現地の人とアーティストが関係性を作るように複数年かけて取り組むことを心掛けているという。アーティストが交流先の国に対する知識や理解を持つことを前提に、、信頼関係が大事な要素だと語る。目澤氏からは、コロナ禍を経て、国際交流に貪欲な願望を持つアーティストが減っているのではないかという課題も共有された。
その後、会場の参加者も交えたラウンドテーブルでは、自信を持って作品を創ることや、アーティストや作品をどうプレゼンテーションできるかが国際的なシーンで活動する際に重要だと話された。2人は、強いモチベーションで始めたプロデューサーの仕事であり、継続するためにも仕事の環境を整えることが大事だという。また、アーティストのキャリアップのために必要な新しい視点や国際フェスティバルの役割についても話が展開した。
最後に、参加者同士のコミュニケーションにも繋がる有意義な場となったと感想が話され、閉会した。