第2回企画委員会 「オリンピックは地域振興の起爆剤と成り得るのか?-オリンピック×芸術文化-」@高知県立美術館
2015.9.2
日時:2015年8月7日・8日
場所:高知県立美術館
第2回企画委員会のため、よさこい祭り直前で賑わう高知県に行ってきました。
1日目は、高知県立美術館講義室でのシンポジウムとディスカッションに参加しました。
13:00〜14:00
最初に、吉本光宏氏(株式会社ニッセイ基礎研究所 研究理事)より、「2020年東京五輪—文化プログラムによる地域活力の創出に向けて」というお話。2012年ロンドン五輪での文化プログラムの例を、写真や映像を交えて紹介していただきました。日本ではスポーツ競技の部分ばかりが放送されていたけれど、同時にこんな盛大なことが行われてたのだなあ、、、ということに、改めて気づかされました。
アスリートが来た204の国と地域すべてからアーティストが来たこと。イギリス全土で開催され、文化施設だけでなく、歴史的建造物、広場、自然空間など様々な場所でも行われたこと。そしてそれらの多くは無料で公開され、英国民なら誰でも文化を通してオリンピックに参加できたこと。が大変印象に残りました。様々な規制も超えて行われたプログラムの数々は、それを通じて、イギリスの歴史や文化を紹介することになってるなあ、、、と感じました。
東京の時はどうするべきか、ということに思いを巡らせます。東京五輪に向けては、「20万件の文化イベント」を行う、という目標値が設定されています。それらは東京だけでどうこうできるものでもないし、地域で活動する我々にも決して、無関係なものではありません。
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14:00〜14:30
続いて、正野圭治氏(国際交流基金 企画部総合戦略課長)より、国際交流基金のオリンピックに向けた取り組み、中でもアジアセンターの取り組みについてご紹介いただきました。
国際交流基金は、日本と海外の交流をする組織であり、アジアセンターは、日本とASEANの交流を推進するため、2014年にできました。様々な分野の文化芸術の双方向の交流が取り組まれていますが、選手や出演者だけでなく、関係者、運営スタッフなど総括的に交流することを意識して、行われている。また、各地のフェスティバルやプロジェクトとの連携が多く実施されているとのことでした。
地域に深く根ざしているプロジェクトやプラットフォームと、基金が持ってくるネットワーク、その強みを組み合わせて事業を拡充していくことの意義を話されていましたが、これは今後さらに重要になっていくだろうと感じました。
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14:40〜16:00
その後、藤田直義氏(高知県立美術館 館長)をモデレーターに、質疑応答の時間がありました。
藤田さんもおっしゃっていましたが、オリンピックはスポーツの祭典であり、また、東京で行われることだから地方は関係ない、と思いがちですが、そうじゃないということが改めて感じられました。
すでに、各都市でオリンピックに向けて検討している例もあります。高知県からも、“2020年東京オリンピック・パラリンピックへのご提案”というのが出されているそうです。京都・静岡・新潟・埼玉等、担当セクションができたり、プランを発表したりしているところもあります。
たとえば高知にも、オリジナリティあふれるイベントがたくさんあります(高知国際版画トリエンナーレ(いの町)、絵金祭り(赤岡町)、蛸蔵の活動(高知市)、アーティスト・イン・レジデンス(須崎市)、等等)。オリンピックを機に、各地のがんばっている人が注目される、いい契機になれば、、、と言われていました。
吉本さんがおっしゃった、「またそこに行ってみたいか」という視点は、とても大事だと感じました。「オリンピックイヤーではなく、その翌年以降を狙った戦略が必要である」ということは、地域にとって特に重要な考え方ではないかと思いました。
また、「出会う、そのための場。交流を将来続けていける人材。そこで生まれた価値観。は、オリンピックを超えても残るだろう」と、正野さんはおっしゃっていました。どう継続していくかを視野に考えることが重要だと、本当に思いました。
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16:20〜17:20
参加者によるグループディスカッション
・高知の、起爆剤となりうる素材について
・アジアから見た高知の魅力について。海外にアピールできるものは何か
というテーマについて、6~8名のグループにわかれて、話し合いました。
参加者には、他県から訪れたON-PAM会員と、高知県在住の人がいたので、住民が感じる高知と他地域から見た目線、双方からのアイデアを出し合うことで、以下のような意見が出ました。
◎「高知の魅力」を考えると、結局、そこに住む人間のもっている魅力にいきつく。アーティスト同士、アーティストと地域を結びつけやすい土壌があるのではないか。地域の人達の協力体制がある。交流を広げて行ける基礎力が高いのではないか。
◎高知にも有名なものはあるが、アクセスが悪いので、ついでに高知に寄るということがない。高知が目的でないと高知に来ない。アジアへのアピールの前に、まず日本にアピールしていく必要がある。
◎「よさこい」は、総合芸術である。その魅力をきちんと伝えていくべき。全国各地で「よさこい」が行われているが、それぞれの地域にあるよさこいと、高知のよさこいの違いを明確に出し、差別化をはかる必要がある。
よさこいの全国大会をやったらいいのではないか。自由度のあるレギュレーションを活かして。たとえば、インドネシアのスラバヤでは、2003年から継続的によさこい祭りが行なわれている。他国・他地域のよさこい大会の優勝者を本場に呼ぶ、など。強いインパクトを持って帰ってもらえば、土佐の良さを宣伝してくれることにつながるであろう。
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2日目は、朝から、高知県立美術館ホール事業の活動紹介と施設の見学をさせていただきました。また、ちょうど滞在中のインドネシアのレジデンスアーティスト「ペーパームーン・パペット・シアター」のイワン・エフェンディさんとマリア・トリ・スリスチャニさんからも話を聞くことができました。
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その後、市内の「蛸蔵」「かつおゲストハウス」「沢田マンション」などを見学し、高知の魅力を満喫しました。
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今回、高知での委員会へ参加して、このように各地へ訪れることの意義を改めて感じました。シンポジウムも、高知の色々な人に会えたことも、観光したり飲みに行ったりしたことも、それぞれが具体的にとても有意義に繋がっているなと思います。
また、オリンピックの話を東京以外のところで聞くことができたのは、とても良かったです。これまで、各地で我がコトとして考える機会は、なかなかなかったように思います。高知で、高知の人達と話して、少し具体的に思いを馳せることができました。各地域によって、それぞれ違った要素もあるだろうと思うので、今度は自分の地元・京都で、京都の人とも本当に考えていきたいと思いました。
文責:植村純子(劇団衛星/フリンジシアタープロジェクト)
参加者:33名(会員7名、一般参加23名、その他ゲスト等3名)
議事録