第1回国際交流委員会 議事録
2013.8.9
日時:2013年4月8日(月)13:00〜16:00
会場:ArtTheater dB神戸(兵庫県・神戸市長田区)
司会:斉藤啓(鳥の劇場/ON-PAM理事/国際交流委員長)
出席者:約18名(※委員数は4/20以降に決定のため未確定)
資料:国際交流委員 活動案1部
舞台芸術制作者オープンネットワーク委員会規程案1部、
開催趣旨
「委員会活動案」「委員会規程」の提案および内容、運営方法についての意見交換
議題
1. 委員長紹介、挨拶
委員長:斉藤啓(鳥の劇場/ON-PAM理事)
・ON-PAM立ち上げの経緯の説明、国際交流員会 第1回委員会に出席の理事の紹介、配布資料および本日一日の流れについての説明
2. 「国際交流員会活動案」概略説明(斉藤)
斉藤啓:基本的には委員会に参加される方のアイデアをもとにして進めていきたい。なので、2回目以降をできるだけ白紙にして望もうと思ってやってきた。ただ、思いや考えがあってここまで進めて来たので、そこをクリアにしておきたいということで、活動案を作っている。ここでは、国際交流委員会では何をしようか、もしくは何をすべきか、できるのか、何を期待されているのかを、①から④まで列記している。
①では、基本的には参加されるメンバーの方々の普段やっておられる仕事の中からあがってきた課題を汲み取って、それをネットワークでしかできない形で、改善する方向にもっていけないかということ。これが委員会的には基礎になるところかと。
②は、ON-PAMは個人で入ることが前提となっている。個人の制作者が自由に海外とのネットワークを構築して行き来ができるように、英語でいえば「モビリティー(mobility)」を高めていこうということ、これはON-PAM全体での目的でもあるかとは思うので、これを実現する為の方法を探る、ということ。
③は、ON-PAM自体を「オープン」と言っている以上はボーダレスなものにしていかなくてはならないということもあり、国際交流委員会のということより、ON-PAM全体の課題として考えるところかと。
④は、以上の3つの点に関して、国際交流委員会の中で、部会とか研究会とか勉強会とか立ち上げて、委員会の中で併行して独自に動いていくということを運営面で考えたらどうかなと思っている。
質問
なし
3. 委員自己紹介および事例紹介(問題意識、課題など)
森久:シアターKASSAI(池袋)運営サポート。TANGRAMにてプロデューサーや役者、舞台美術の製造に関わっている。今は国際交流に関わる事例はない。
西山:テクニカルスタッフで英語ができる人は貴重。テクニカルスタッフの業界では、国際事業に向けて英語を勉強するような、なにか試みをされていることはあるのですか?
森久:特にないです。需要があるのかという点。
斉藤啓:英語のできる舞台監督の数が少なく、海外公演や招聘公演の際にその人たちに集中している。またテクニカルのことが分かる通訳も大事かなと。
富田:ドッグライツ プロデューサー。これまで知的財産権の著作権のことをやっていた。知り合いのアーティストが中国公演をする際に、著作権について相談されたことからこの業界に入り始めた。問題点は、私は弁護士でないので、GOを出したときに、何か問題が起こったときに誰が責任をとるのかというところ。
橋本:「Kyoto Experiment」立ち上げ経緯、フェスティバルの概要紹介。
<ハブとしてのフェスティバル>
京都を中心に活動しているが、アーティストが活動の幅を拡げていこうと考えたときに必ず東京を経由していかないといけないのかという問題意識があったということ。各地方都市がダイレクトにほかの海外の地域と繋がってやろうと思えばできると思った。チケット収入だけで採算をあわせていこうとしても難しい演目をやっている場合は、上演料だけでは生き残っていけない。地域の人だけの観客を集めるのが難しければ、各地に自分たちで遠征してやっていくことが必然的に求められるだろうと考えた時に、「ターミナル」というか「プラットフォーム」になるような場所が必要だろうと思い、このフェスティバルというスタイルを選んだ。
<アーティストの活動環境について現在考えていること>
アーティスト自体の活動の仕方として、日本、京都を拠点にしているからいって京都市や日本の行政から支えられているという考え方を変えていってもいいのではないかと考えている。国籍や国境とは無関係にいろんな所の観客や行政から作品作りがサポートされてもいいのではないかと思う。このフェスティバルでは単に作品を紹介するだけではなく、創作をサポートしようと共同制作を積極的に行っている。日本人とコラボレーションをするということではなく、その人の才能と協働することをやってみたい。そのようにアーティストが生き延びていくことの仕組みを考えていて、そういうこともこの委員会で考えていきたい。
会場:海外の人を招聘したり作品を作る際に、京都の観客がどのようにその作品を捉えるのか考えますか?
橋本:フェスティバルを3回行ってきた中で、京都や関西の観客を信頼できるようになってきた。チケットの売れ方をみた時に、見たことのないものだから見に行こうという観客層が増えている印象がある。若者が多い割に街が小さいので、いろんな人が出会いやすいという土壌があるのかな、という実感がある。他のジャンルのアーティストとの出会いも日常的にあり、他のジャンルのアーティストを刺激するようなプログラムを作れたらと思っている。
横堀:海外のアーティストはどこから見つけてくるのか。
橋本:フェスティバルからが多い。そういう意味ではフェスティバルは便利で、1週間ある地域に滞在しているだけで、10本・20本の作品を見れる。「Kyoto Experiment」を立ち上げる際にも言われていたことで、複数の作品を一度に見れたら京都に行く、のような。
斉藤啓:海外の人に対して、ショーケース的な役割はどれほど達成できているのか。
橋本:まだまだ。一番の問題はフェスティバルの認知度。まとめて見れることについては未だ足りていない。週末にせいぜい3本重ねられているだけ。劇場の数がまだ少ない。
西山:日本人の作品がどのようにしたら海外で売れるのか。
橋本:よく分かっていないのが現状。このディレクターはこの作品が好みだろうと、、とあるけど、そのアーティストが「Kyoto Experiment」で紹介したいアーティストというわけでもない。日本人のアーティストのセールスマンとなってこのフェスティバルを行うようになってしまうと、何の為のフェスティバルやねんということになる。見本市的なこととは切り離してやるようにせねばと思っている。
横堀:新長田の地域の紹介。ダンスボックスの事例紹介。
課題としていることは、
・これまで低予算でずっと行ってきたので、ソロやデュオのアーティストを招聘する場合が多く、プロダクションを受け入れるノウハウを持っていない。契約、保険、ギャラの交渉の仕方、ビザ、税金のことについて勉強したい。
・ダンスボックスで招聘したアーティストを神戸のみで上演するのではなく、いろんな地域で上演できるようにし、招聘する際のリスクをシェアする為の方法を考えたい。
・「モビリティー・ファンド」も必要。あったら使ってみたい。
・フェスティバル間の国際共同制作も行いたいのだが、助成金の結果を待ってしか動きだすことができないので、遅くなるということ。
齋藤啓:「モビリティー・ファンド」使ってみたことある人?日本国内にある?TPAMにくるゲストはどうしている?
塚口:自国の渡航費助成をとって来る人が多い。ただアジアにはないので、アジアの人に来てほしい場合は負担する。
横堀:例えば「モビリティー・ファンド」を得て出会った人々のリソースをリサーチした本人一人が抱え込むということはどうか。
田嶋:地点、制作。これまで劇団の制作、民間の劇場、公共の文化施設で制作として携わり国際プロジェクトを担当してきた。
・国際共同制作やレジデンス事業の際に、一番悩んだことは、これを日本の観客に紹介することが難しい、動員を集めるのが難しかった。「なんの為の国際交流なのか」を考えさせられた。
・情報共有の面においては、地点では積極的に海外公演に取り組んだわけではないのだが、今まで言った国、地域、劇場であった人々について、聞かれたら答えるというスタンス。
・将来的には自分たちの作品が海外に行くだけではなく、海外の作品を招聘する立場になるだろうと考えている。その場合、自分ひとりで手に負えないだろうという不安もあり、課題として感じている。
・公共ホールが海外公演をすることの発想がない。まずは公共ホールが作品をつくっていないことが問題だと思うのだが、その発想に至らない。いつか公共ホールも作品を買うだけではなく、日本の舞台を売ることもなってくるだろう。個人的に海外で公演を行って思うのは、成果を持ち帰る場所がない。一カンパニーにストックされていく。コネクションやノウハウなど、還元される場として公共ホールが海外公演に積極的になるべきだろう。
・ON-PAMに期待することは、公共ホールで働いている人たちが沢山会員になって、考えるべきだと。文化政策との連携による政策提言について、公共ホールが地域の作品づくり・発信を視野にいれた提言作りを入れてもいいのでは。そうしないと個々のモチベーションでいくしかない。もう少し劇場が機能を果たすべきだと。
今尾:りゅーとぴあ 制作。地域の交流が広くなって海外の交流に繋がっているので、海外で問題になっていることは、国内公演で全部問題になっていることではないかと思って聞いていた。公共ホールの知り合いは多いのですが、なかなかこういう場に出てくるような人は少ないかも。個人的に興味があるのが、いろんな人と出会いたいなということ。
西山:青年団の国際事業の担当。今は神戸在住。
・青年団では、演劇にロボットを取り入れるようになってから、国際事業をとりまく環境がかわった。海外によばれる機会が2倍増えた。演劇の面白さとはかけ離れたところで、アプローチがくることもよくある。演劇とかけ離れた主催者によばれた時に現場がとても大変なことも。公演に対して支援されるパイは限られているが、演劇の外に支援を得る方法があることを知れたことは収穫。
・文化庁から助成をもらって海外公演を行っていることもあるので、文化政策の意図を感じることもある。文化外交の一環として2ヶ月外国に行くこともある。これでいいのかなと感じることもある。
・この場が、外国へいってフィードバック出来る場になれば。経験してきたことがお役にたてる場があれば。
森沢:ピーチャム・カンパニー制作。国際関係の経験についてはこれから。F/Tの公募に2年連続で選ばれたことで、海外の人の目線でどう受け止められるのかが、興味として強くなっていた。劇団の作品では社会性の強い部分が強いのですが自分たちのやりたいことと、国際のフェスティバルに通用するような作品づくりとのバランスについて考えている。
佐藤:小池博史ブリッジ・プロジェクト 制作。現在、カンボジアやマレーシアのアーティストと協働で進めている。予算が決まるのが年度末、このプロジェクトは5月の開催、資金獲得に謀殺されている。海外での公演の場合、文化状況について身をもってしらない中でどう集客するのか。作品のクオリティを保つために、作家との兼ね合いをみながらどう出来るのかが課題。海外の新規事業の開拓、どう情報収集していくのかが課題。
阿部:関西にいると英語に携わる仕事がない。いろんな小劇場が多く有るのに、海外にいけない状況。海外公演等のお手伝いしたい。それをどうお手伝いしたらいいのか分からない。
平井:重力Note 制作。昨年劇団がF/T、今年BESETO演劇祭に参加。自分たちが知らなかったやり方を海外とつながることで知ることができた経験があった。海外で出来ていて、日本ではされていない形での演劇を見せる仕組みを学べたらと思っている。海外公演をやろうとした時に、どうすれば現地のことを知ることができるのか、下見とかできるようになるのだろうかと、そういうことを知れたらと思っている。
林智典:ミホプロジェクト 制作。茂山家、音楽、ライブペイティング等のプロデュースを行っている。
斉藤努:ゴーチプラザーズ。ON-PAM理事。柿食う客の制作。エジンバラ公演の制作など、国際事業に携わってきた。
藤原:Next/ON-PAM事務局。Nextの紹介。具体的に国際関係の仕事はないのですが、文化政策のなかや地域協働の中で、国内だけを見ていても事例として見つからないことが、海外の事例を知ることで共有できることがあるのではないかと思っている。
川口:Next/ON-PAM副理事長
・ネセサリー・ステージ アルビン・タンのワークショップに参加。日本の戦争についてのディスカッションや日本公演を視野にいれて活動に参加して欲しいと言われた。観客はどうするのか、どういう資金で進めていくのか、情報のシェアの問題を考えていきたい。
・ナショナル・シアター・ウェールズ アセンブリーのお手伝いをしている。僕自身が地域に対して仕掛けたい思いがあって、彼のノウハウを学びたいと思った。僕自身が地域の人とつながれていないのに、彼が地域の人とつながりたいと思ったときに、どう出来るのかと思っている。
塚口:PARC/ON-PAM常務理事:TPAM(国際舞台儀得術ミーティングin横浜)プロフェッショナル同士が出会うプラットフォームの事業を行っている。国際交流ということで思うことが、課題として考えたこと、以下3点。
1政策的ではない交流ができないか。身の丈にあった人たちと出会える場。ずっと繋がっていける人と繋がりたい。
2制作者のモビリティーについて。「モビリテイー・ファンド」の実現について。
3国内でも国際についての考え方のギャップがある。海外に輸出する為だけにTPAMをやってる訳ではない。地域を越えて視野を拡げることと、日本のことを考えるときに外側からの視点が必要だと思う。
4. まとめ
斉藤啓:地域という話が沢山でてきた。国内でやることと海外でやることの普遍性、共通点のある問題提起が沢山あった。一方で、海外や国際交流という事業の分野でおこる固有の問題のトピックスもでてきた。地域と海外もしくは国際が対局に置かれてしまうということが立ち上げの所から感じていたことがあって、今日の午後の<関連企画>で国際交流ということを地域という視点から見てみたいということで、第1回の我々からの投げかけとして企画した。
あと、作品に関することも沢山でてきた。5つの点が挙げられる。
1. 「フェスティバル」。いろんな話題を多く含んでいて、フェスティバルを切り口に様々な話が出来るのでは。固有のことでいえば、作品を受け入れる視点が言える。
2. 作品を海外にどうやって持っていくことが出来るのか、また国内でそもそも再演していくことができるのか、「作品の流通」のようなこと。国内海外問わずテーマとして考えても面白いかも。
3. 「モビリティー・ファンド」について。これをどうやって関連づけたらいいのか未だ分からないのだけど、情報を報告し合う、情報を共有するということ、これをどうやってこの場でお金をかけずに行うことを考えられたら。
4. 助成金 この場では意外と出てこなかった。
5. 法的な環境、制度的なこと、ビザ、社会保証については勉強する価値がある。
現実的に全てにこれを部会にするのは難しいかと思っている。そこで、提案ですが、運営に関わってくれる方を募集したい。第2回の委員会を6月には行いたい。プランを一緒に考えて下さる方を募集したい。委員会の開催地のバランスもあるので、いろんな方に運営に関わってくださればと思います。6月は関西でないところで実施します。沢山のアイデアが頂けて、よかったです。委員会のセッションはこれで終わりにしたいと思います。ありがとうございました。