政策提言調査室「ON-PAM政策提言ガイドラインについて」レポート

2017.8.25

日時 2017年6月23日(金)17:15~19:00
会場 三鷹SCOOL

1.  提言ガイドライン案について

理事会でこのガイドライン案の仮運用が承認されたことをご報告したうえで、ガイドライン案の簡単な説明を行いました。
「ON-PAM記名提言」に関して、西尾祥子さんから一点、ご指摘がありました。記名提言では15名以上の正会員の賛同が必要とされていますが、この人数の根拠として、注記で、「現理事数を上回る数」としています。これは、理事の中だけで特定の意見が共有され、その他の会員には十分に共有されていなかった場合に、記名提言が成立することを避けるために設定された条件でした。
ただ、西尾さんご指摘のように、理事の数は変動する可能性があります。定款上では、「理事10人以上25人以内」と規定されています(第12条)。とすれば、この規定を「理事の数+α」のような形に変更すべきなのか、今後、来年総会での審議するまでに、政策提言調査室で、改めて検討しようと思います。

2. 今年度政策提言調査室のテーマを考える

奥野室長から、これまでのON-PAMの活動の中で扱ってきたテーマの紹介があり、また、政策提言調査室のなかに、室からの積極的な提言を目指す「文化政策部会」と、会員からの提言提案の対応や会員の意見収集を行う「会員提案部会」という2つの部会を設置することについて、説明がありました。今回は「文化政策部会」で取り組むべきテーマについて、参加者から意見を伺いました。奥野室長としては「芸団協や劇音協ではなく、ON-PAMでしかできない課題に取り組みたい」とのことでした。

参加者からは、以下のような案がでました。
・有効に政策提言ができるようなシステムの研究(NPO法人シーズなどの団体に話を聞く?)
・2020年以降の舞台芸術環境をめぐる問題
・最近改正された文化芸術振興基本法の運用をめぐる問題
・表現の自由をめぐる問題
・社会包摂をめぐる問題
・著作権をめぐる問題
・東京以外の地域における舞台芸術振興をめぐる問題(以上4つの問題は文化芸術振興基本法の改正点とも関連しています)

個人的には、2020年代、例えば2030年くらいに、どんな環境で働いていたいか、自分たちより若い世代にどんな環境を引き継いでいけるか、ということをひとつの基準として、優先順位を設定していくのがよいのではないか、という気がしています。最近「2020年以降」への危機感を耳にする機会が何度かありました。未来への責任というものがあるとして、自分が今、責任を持って具体的に考えられるのは、せいぜい10年後ぐらいまでではないかと思います。

この委員会と同日(6月23日)に公布された文化芸術振興基本法の改正案には、「文化芸術活動に関する企画又は制作を行う者[…]の養成及び確保」が盛り込まれました(第十六条)。一方で、『舞台芸術』誌「2020年以後の舞台芸術」特集号(2017年春、第20号)の座談会でも、「芸術助成についても、今がいろいろなピークで、ここからは減る一方だと考えるのが妥当」(内野儀さん、26頁)という話がありました。日本で舞台芸術制作者が仕事をする環境を整備するには、もしかすると、これが最後のチャンスなのではないかという気すらしています。

現状では、劇場法や文化芸術振興基本法を通じて、「舞台芸術を振興する必要があり、そのためには舞台芸術制作の専門家が重要な役割を果たす」、というところまではある程度共通の認識となったものの、必要な能力を持った専門家を十分に確保するにはどうすればいいか、という施策については、まだ十分な共通認識ができていない状況だと思います。舞台芸術制作者をどのように育成すればよいのか、いわゆる「キャリア形成」が可能になり、知見が蓄積されるようにするには、どの程度の社会的地位(雇用条件、労働条件、資格や行政上の位置づけの問題など)が必要なのか、といった問題に、舞台芸術制作者自身がきちんと取り組む必要があると思っています。

こういったテーマに取り組んでみたいという方がいらしたら、ぜひお声をかけていただければと存じます。