ON-PAM アジア会議in バンコク レポート

2019.11.8

ON-PAM アジア会議in バンコクを実施しました。アジア会議は、アジア圏内のプロデューサー、舞台芸術関係者との交流とネットワーク構築を目的として開催。2015年の光州、2017年のシンガポールに続いて、第3回目となります。今回は、BIPAM(Bangkok International Performing Arts Meeting)とのパートナーシッププログラムとして実施しました。日本からのON-PAM 会員2名、日本外からのアジア圏プロデューサー2名が参加。その他にも、プログラム中、飛び入りで国内外の方々が参加してくれました。

BIPAMは、2018年に始まった主に東南アジア圏内のプロデューサー、アーティスト、舞台芸術関係者のためのプラットフォームです。今回が2回目で、2019年10月16日(火)〜21日(日)の5日間にわたって開催されました。BIPAMは日本のTPAMにインスパイアされて立ち上げたとのことで、作品の公演だけでなく、多様なテーマを扱うトークやワークショップ、テーブルミーティングなどがあり、参加者同士の交流やディスカッションの場が設けられています。比較的小規模で、多くがアジア圏内からの参加でした。5日間の中でほとんど参加者全員の顔ぶれがわかって挨拶を交わせるほど、アットホームな雰囲気がありました。

ON-PAM アジア会議の初日、オリエンテーションを行いました。日本国外からの参加者は韓国からインディペンデント・プロデューサーのPark Jisunさん、シンガポールからCenter42のMa Yanlingさん。2人とも以前のアジア会議に参加いただいた人です。BIPAMのアーティスティック・ディレクターであるSasapin さんと事務局のSireeさんにも参加いただき、BIPAMの紹介やアジア会議の目的、今後のスケジュールなどを共有しました。

BIPAMの初日は、Pradit Prasartthong氏(タイ)の基調講演で幕が開きました。タイの舞台芸術シーンを牽引してきたアーティストであるPradit Prasartthongさんが、自身の活動キャリアやタイにおける現代舞台芸術の発展についてお話をされました。

続いては、タイの6つの舞台芸術フェスティバルについてのプレゼンテーションとディスカッション。どれも強いコンセプトと現状への課題意識のもと立ち上げられたフェスティバルですが、特徴的だと思ったのは、どれも若いアーティストたちによりインディペンデントで運営されていること。日本における芸術祭/フェスティバルの隆盛がほぼ行政主導で行われたことと対照的で、タイのアーティストコミュニティのパワーを感じます。その分、資金面やマンパワー不足による持続性の問題(たとえば、Bangkok Theater Festival とBIPAMの運営チームはほぼ同じメンバーで構成されていて、時期が重なると大変らしい)、観客をどう広げるかという課題を抱えているようでもありました。

オープニングを飾る公演は、タイの現代舞台芸術のシーンを代表し、国際的にも活躍するカンパニーB-floorの‘Damage Joy’。この作品は今年のBIPAMのテーマ‘Eyes Open’つまり「暴力」や「争い」という直視すべき現実を提示するというキュレーションのもと、メインプログラムの一つに位置づけられています。

2日目の夜は、台湾からの参加者との交流会を行いました。近年、台湾では東南アジアとのネットワークを強化していて、パフォーミングアーツのシーンでも様々な協働作品が生まれているそうです。タイの鍋を囲んで、それぞれの活動の紹介や、タイとの国際協働制作で難しいこと、興味深いことなど、さまざまな意見交換が行われました。

3日目は、Southeast Asian Producer’s Networkのトークがありました。東南アジアの舞台制作における「政治」との関係について。政治的な理由で作品が規制、検閲されることが珍しくない東南アジア諸国において、舞台芸術のプロデューサーやアーティストはどのように向き合ってきたのか。タイ、インドネシア、マレーシアのプロデューサーたちがプレゼンテーションを行い。各国の様々な事情がみえてきました。アートと政治の関係、規制の問題は日本においてももはや人ごとではなく、東南アジアにおける取り組みに学ぶところも多いのではと思います。

この日は日本から、現在開催中のフェスティバル・トーキョーのディレクター 長島確さんを招いてのトークもありました。

BIPAMでは、日本で行われているTPAMと同様、テーブルミーティングのプログラムがあります。事前に登録すれば誰でもホストになることができ、設定したテーマに合わせて5-10人ほどの少人数でのオープンディスカッションの場が持てるという仕組みです。ON-PAMアジア会議でもテーブルミーティングを開催。参加者がこれまでに関わったON-PAMプログラムの紹介や、これからのアジア圏内のネットワークのあり方などについて話をしました。なかでも、ON-PAMのようなゆるやかなネットワークは、会員にとってどのような点が有用なのか、ネットワークが若い層にも開かれるためにはどうすればよいのかなど、各国の状況などを比較しながら、議論が盛り上がりました。

4日目の夕方からは、エクスカーションを行いました。バンコクのカンパニーDemocrazy TheaterのプロデューサーであるPavinee Samakkabutrさんに案内してもらい、彼らの建設中の新しいスペースを見学させてもらいました。バンコクでは、ひと昔前まではアーティストがスペースを持って活動を行う事が多かったのですが、ここ数年、資金面や運営面など様々な理由からスペースが減ってきているそうです。Pavinee Samakkabutrさんらが運営してきた劇場Democrazy Theate Studioも昨年クローズ。

現在はもともと縁があった不動産オーナーと一緒に、新しい場所にスペースを計画中。現在はまだ工事中でしたが、Democrazyのスペースだけでなく、ビル全体がパフォーミングアーツ、美術、映画など様々なアーティストを支援するようなアートコンプレックスになるのだそうです。今後、どのようにランニングしていくかなど、新しいスペースのあり方を模索しているように感じました。

最終日は、ON-PAMアジア会議のクロージングセッションとして、振り返りのディスカッションを行いました。今回のアジア会議は前回のシンガポール、その前の韓国と比べて少人数となったことから、より交流が深まり、個人同士のネットワーキングが可能だったことです。今後、アジア内でのネットワークにどんなことが必要なのか、アジア会議のあり方等について話し合われました。

この日はBIPAMのふりかえりセッションもありました。参加者は15名ほどで、3つのグループに分かれてBIPAMの良かった点や改善点など、率直で具体的な議論がされました。BIPAMは今年2度目の開催ということもあって、内容面、運営面ともによりよいやり方を探っているようです。この手作り感がオープンな雰囲気にもつながっていて、今後が楽しみなプラットフォームです。

以上が、ON-PAMアジア会議 in Bangkok の5日間の様子です。今回、東南アジア地域を中心としたプラットフォームBIPAMに参加し、アジア圏からの舞台制作関係者と交流する事で、アジアは本当に多様で、それぞれの国・地域の歴史的、文化的、政治的関係性も様々だということを改めて実感しました。BIPAMのトークなどのプログラムでも繰り返し‘person-to-person relationship’という言葉が強調されていましたが、多様だからこそ、舞台芸術の国際協働においても個人どうしのネットワークが重要となってくるのではないかと感じます。

レポート執筆:野崎美樹