ON-PAM 委員会 2025 @YPAM Next Producers Meeting 2025 in 横浜 レポート
2026.5.11
日時:2025年12月9日(火)15:00-15:40
会場:男女共同参画センター横浜南フォーラム南太田
登壇者:
大橋玲(穂の国とよはし芸術劇場PLAT 制作)
木村友哉(ザジ・ズー プロデューサー、仮設社、ザ・シティイ スペースキュレーター)
Namhyun Kim(Independent Producer)
モデレーター:
伊藤美笑子(舞台芸術制作者、ON-PAM理事)
坂本もも(合同会社範宙遊泳代表・プロデューサー、ロロ制作、ON-PAM理事)
当会は、YPAM Exchange ラウンドテーブル内で、ON-PAM委員会として開催した。日本や韓国で活躍する次世代の舞台芸術制作者/アートマネージャーとして、大橋玲氏、木村友哉氏、Namhyun Kim氏が登壇した。初めにこの場は国際的な舞台芸術プラットフォームの中で、「出会いそのものを大切にする場」であることが共有された。
まずは、登壇者が現在の活動内容と将来のビジョンを話した。最初に大橋玲氏は、愛知県豊橋市にある「穂の国とよはし芸術劇場PLAT」での経験を紹介した。同館は、外部公演の招聘や市民参加型公演、ワークショップ、アウトリーチ、舞台手話通訳付き公演など多彩な事業を行う公立劇場である。大橋氏は、公共劇場は人を集めるだけの場所ではなく、芸術で地域社会をつなぐハブとして、積極的に外へ出て人々や地域と関わっていく存在であると語った。当初は劇場就職を想定していなかったが、公共劇場が地域に還元する仕事に魅力を感じ、約10年間勤務を続けている。
続いて木村友哉氏は、「ザジ・ズー」「仮設社」「ザ・シティイ」という複数の活動を横断しながら実践している立場から話した。演劇コレクティブ「ザジ・ズー」は2022年に結成され、「劇団」という固定的な枠組みではなく、状況に応じて人が集まり、離れ、再びつながる柔軟な関係性を大切にしている。木村氏は、このラウンドテーブルの聴講者もザジ・ズーの一員であると語り、ゆるやかなコレクティブのあり方を示した。
また、「仮設社」の活動では、STスポットと連携し、完成作品だけでなく、創作のプロセスを共有し、価値化・アーカイブ化することに取り組んでいる。創作が結果だけで消費されがちな現状に対し、プロセスを開くことで関わる層を広げたいという問題意識が示された。さらに、オルタナティブスペース「ザ・シティイ」については、前回のYPAMへの参加を機に横浜へ拠点を移し、元板金工場を改修し、今回のYPAMでこけら落とし公演を行うことが紹介された。将来のビジョンとして、国際交流を単なる発表やビジネスの場ではなく、互いの課題意識を持ち寄り、環境をともにつくる関係性として続けていきたいと語った。
最後にNamhyun Kim氏は、韓国で活動するインディペンデント・プロデューサーとしての歩みを率直に語った。大学で演劇を学んだ後、広告会社での勤務を経て舞台芸術の世界に戻り、インディペンデント・プロデューサーとして活動を続けているが、その仕事のあり方は現在も試行錯誤を続けていると語った。プロデューサーを単なる調整役や管理者ではなく、行政やマーケティングも含めた「創作の一部」として捉え、友人や仲間との関係性を活動の基盤にしてきた経験が紹介された。「国際交流」という言葉は大きく聞こえるが、実際には信頼できる人との出会いや会話の積み重ねから始まるものだという言葉が、会場の共感を呼んだ。
後半は、モデレーターの坂本もも氏より「だれと創るのか」「どのような人と創っていきたいのか」「それをどうやって見つけるのか」という問いが投げかけられた。大橋氏は、公共劇場の仕事は多岐にわたるため忙しく、意識して自分から外部に関わり続けようとしなければ、同じ環境に留まり続けてしまう危険があると語った。現在も関わりのあるアーティストはいるものの、世代交代を意識したとき、自分はまだ十分にアーティストと出会えていないと感じ、全国公立文化施設協会の舞台芸術海外コーディネーター育成事業に参加することにしたという。また、幼少期に中東で多様な文化の中で過ごした経験が、海外へ目を向けるきっかけになったと語った。日本のアーティストに限らず、多様な背景を持つ人々と出会い、その経験を地域へ還元していきたいという思いが示された。
木村氏は、「何かが起こる“場”をつくることが重要」と語った。隔月で実施している交流企画「演劇夜話」では、演劇に関心のある人と出会える場が少ないという声が上がったという。そうした接点を持たない人にも開かれた場をつくりたいと語った。
Namhyun Kim氏は、キャリア初期は「私はプロデューサーです」と言いながら仕事を探していたが、現在は日常的な会話を重視していると語った。「一緒に仕事をしよう」と先に決めるのではなく、食事や何気ない会話を重ねる中で、自然と次の仕事の種が生まれる感覚を大切にしているという。この意見に木村氏も強く共感しつつ、舞台芸術という共通の関心があったからこそ自分たちも出会えた関係性であるとも述べた。
一方、大橋氏は、芸術を仕事にしていない市民とともに創作することの面白さを補足した。東京に行かなくても、本業の傍らで表現活動を楽しむ人々とアーティストが交流できる場をつくりたいと語った。ステージと客席を越えて交流できる柔軟な関係性が、その土地を豊かにしていくと信じているという。
最後に会場から「制作者とアーティストの境界はあると思うか」という質問が投げかけられた。木村氏は、境界があった方が信頼性を保てる場面もある一方で、誰もがアーティストであるとも感じていると語り、状況によって揺れ動く感覚を吐露した。Namhyun Kim氏は、直感的には境界はないとしながらも、制作者としてのアイデンティティが強くなりすぎることへの警戒を語った。大橋氏は、制作者とアーティストは役割として異なるとし、現実的な視点を担う制作者がいることで、創作の場が成立すると述べた。
本ラウンドテーブルは、制作者がどのように人と出会い、関係を築きながら創作に関わり続けていくのかを、多角的に考える機会となった。
執筆:伊藤美笑子