委員会2026 「ラウンドテーブル ON-PAM2026について話そう」 レポート

2026.7.24

日時:2026年3月8日(日)16:30-17:30
会場:YAU STUDIO、オンライン(Zoom)
スピーカー:伊藤美笑子、小野江麻里子、坂本もも、武田知也、水野恵美、横堀ふみ(以上、ON-PAM理事)、臼田菜南、岡﨑彩音、加藤七穂、松波春奈(以上、ON-PAM事務局)他


委員会2026 「ラウンドテーブル ON-PAM2026について話そう」

本委員会は、ON-PAMの2026年度の活動について、各事業担当理事・事務局メンバーが中心となり、企画背景や今後の展望について共有・議論を行うラウンドテーブルとして開催された。はじめに理事長・武田知也より、ON-PAMの根幹をなす「オープン・ネットワーク」の定義が提示され、その意義と重要性が再確認された。

「オープン・ネットワーク」の考え方をもとにした「ヒエラルキーのない、水平構造を持つネットワーク」「互いの活動や文化を理解するプロセスを経て、新しい価値を創造し、有機的で持続性のあるネットワーク」「メンバーシップの更新が行われやすく、自由に入会、退会、そして必要になったときに戻ってくることのできるネットワーク」という指針のもと活動している。「団体」ではなく「個人」で参加するネットワークであるということも一つの特徴であり、様々な立場や地域で活動する人々が出入りできることも触れられた。

武田自身、キャリアの変遷を通しON-PAMとの関わり方が変化してきたことに言及しつつ、タイミングや状況によって繋がったり遠ざかったりしつつも、各個人の問題意識が出発点となって、新たな議論や提言が生まれる点にON-PAMのネットワーク機能の「貴重さ」があると述べた。会費収入をどのように有機的に維持・活用できるかについて、検討を深めていく必要にも触れ、冒頭挨拶は締めくくられた。
続いて、2026年度の事業計画の全体像がスライドで示されたのち、政策提言調査事業、国際交流事業、Next Producers Meeting(NPM)、会員提案企画の4事業についての具体的な計画が説明された。

①政策提言調査事業
「ON-PAM対話ラボ ー対話を通じて私たちの営みを言語化するー」と題し、異なるジャンルや立場のゲストを招いたラボ形式での継続的なミーティングを実施する。近年の文化行政が経済効果を重視する傾向にあることへの問題意識を背景に、社会や行政に対してどのような政策提言が有効か、あるいは舞台芸術制作者、舞台芸術そのものに対する中間支援が可能かを探る場として構想される。

テーマとしては、文化政策と自治を切り口にしたもの、市場と創作の関係性を考察するものなど全5回程度が予定されている。そのうち一回は、今注目が集まる長野県の文化政策を学ぶ「コミュニティコモンズとしての舞台芸術 in 長野」を計画中で、関東圏に偏りがちな活動を地域へと開いていく意図も示された。政策提言ができるプラットフォームである特徴を活かし、最終的にはこれらの対話の蓄積が政策提言へと結実することが目指される。

②国際交流事業
4月に開催される国際交流ゼミ合宿と、台湾での開催を計画中の「ON-PAMアジア会議」の二つの企画が柱となる。「国際交流事業をつくる、その前に」と題されたゼミ合宿は、理事の横堀が、自身が拠点とする神戸市長田区で活動する中で、在日コリアンやベトナムコミュニティとの関りにおいて、自らを顧みた経験をきっかけに企画されたという。近年の社会情勢に対する危機感も背景に、過去の歴史を学び直すことを通じて現在の社会を捉え直し、未来を考えるための場として位置付けられる。

一方のアジア会議は、コロナ禍以降途絶えていたON-PAMとしての国際的なネットワークの再構築と、次世代人材の育成を目的として企画される。日本およびアジア各国の舞台芸術制作者が台湾で会し、台北・台中・高雄・台東の各地の関係者とのミーティング、シンポジウム、共通課題をテーマとした議論の場をつくることや、ゼミ合宿との連動の可能性も見込まれる。

③Next Producers Meeting(NPM)
次代の舞台芸術制作者やアートマネージャーの環境整備とネットワーク形成を担う事業として継続される。2021年に始動したNPMは、ON-PAMに若い世代の会員が増えないという課題を発端に、20〜30代の舞台芸術制作者がON-PAMとの繋がりを感じられる企画を、という経緯で立ち上がった。2026年度は、オンライン上のコミュニティとして運用されるDiscord、学生向けプログラムや勉強会、日本各地の舞台芸術祭を訪れるツアー、ラウンドテーブル形式のミーティングなど、多様な活動が展開される予定である。

「ネクスト」とは単なる年齢やキャリアの段階だけではなく、組織の中で発言しづらい立場にある個人や、まだ可視化されていない声に光を当てる視点でもあることが共有された。次世代の参加を促すと同時に、既存の会員との接点を生み出すことで、世代を越えた学びと交流にもつながる場となることが見込まれる。

④会員提案企画
会員が主体となって企画から実施までを担うプログラムとして、共通の関心や課題を持つ会員同士がつながり、サブネットワークとして活動が展開されていくことが期待されている。2026年度は活動補助費の支給方法が見直され、より実態に即した形での支援が行われる予定である。

ここまで見てきた各事業はいずれも、分野や地域、立場の違いを越えて対話を重ねていく点において共通している。事務局長・小野江は、これが団体が所属する統括組織ではなく個人の集まりであるからこそ、フリーランスとして働く人の声も取りこぼさずに伝えていくことを目指したいと総括した。同時に、NPMの活動にも触れながら、あらゆる世代の声を集められる点が、文化政策の意思決定者層に対しても、ON-PAMの存在価値を示すものになりうるはずとの考えを示した。


後半の参加者を交えたディスカッションでは、劇場法の指針の改定に向けた提言に関する話題が参加者から提起された。文化庁の審議会において改定が進められる中で、制作者の立場からどのような意見を発信できるかが問われた。2026年1月に実施された文化庁文化施設部会(第5回)にて、来年度に劇場法の指針の改正が検討されることが示された。「制作者が集まるネットワークとしてON-PAMから何らかの提言ができないか」との投げかけもあり、その場で提案が重ねられた。また今後も、制作者個人が集まるからこそできるON-PAMからのアクションの方法を探っていきたいと、展望が共有された。


続いて小野江から、ON-PAM事務局体制の変化について言及があった。発足当時の理事のボランタリーな運営から、有給スタッフによる事務局機能を強化する体制へと移行している中で、事務局メンバーの主体的な関わりや意見交換が、組織運営の質を高めているという。中間支援組織の運営そのものに価値を見出し、積極的に関わる人材が増えていることは、舞台芸術業界全体としても一つの変化を示す動きといえるだろう。最後には、各事務局スタッフが、ON-PAMに関わる想いを述べた。さらに、ラウンドテーブルに参加した各会員にも発言の場が設けられ、ON-PAMに入会した理由や、今後目指したい関わり方が共有された。


2026年度のON-PAMは、こうした多様な取り組みを通じて、個人の声を起点としたネットワークの可能性を広げていく。参加者一人ひとりの関わりがその価値を形づくるという原点を再確認しながら、対話を重ねる一年となることが期待される。

執筆:寺田凛